第12話 クイーンゾンビ
「回復師は全員負傷者の治癒に回れ!
盾部隊、踏ん張るんだ!
バフ全開!
私も出る!!!」
「リーダーが出るぞ!」
「盾隊下がれ!
邪魔だ!」
「シュアララルさん…!
お願いします!」
シュアララルさんが黒の眼帯を取ると、左目と同様に琥珀の瞳のはずが、右目は赤く光っていた。
「
シュアララルさんが右手を前に出して、そう唱えると、アンデッドの森の大ボス戦のフィールドのクイーンゾンビの半径10メートルは地獄炎の渦に包まれた。
クイーンゾンビの皮膚は焼かれ、ものすごい匂いがする。
が、クイーンゾンビは翼をひらめかせ、空に逃げた。
「追撃する!
私についてこれる者はいるか!?」
シュアララルさんが大剣を天空に構えた。
「お、俺も行きます!」
俺はシュアララルさんのそばに立ち、震える手で剣を握りしめた。
「エルウィー君…!
よく言った!
行くぞ!?」
シュアララルさんは大地を強く蹴り、天に舞った。
俺は大木にジャンプして、勢いをつけて、シュアララルさんの後を追った。
「リリ!
1.5倍!」
『キュー!』
リリの1.5倍で、俺はクイーンゾンビの1.5倍の力を手に入れた。
「悪魔炎斬!」
「聖兎祝福斬!」
高く高く、地上20メートルの上空で、俺とシュアララルさんの技が発動した。
シュアララルさんの大剣はクイーンゾンビの右腕を斬り取り、俺の剣がクイーンゾンビの左肩から胸にかけて斬り込んだ。
「やったぞ!」
「シュアララルさん!
エルウィーさん!」
そんな地上の歓声も短く、クイーンゾンビは翼を分解して刃と化して俺とシュアララルさんに放ってきた!
「くっ!」
「おわっ!」
何とか致命傷を逃れたシュアララルさんだったが、その傷は深かった。
俺はギリギリで木を盾にして刃から逃れ、着地した。
「シュアララルさん…っ!
大丈夫ですか!?」
俺はシュアララルさんを抱き起こす。
「ゴフッ…!
いい…から…
みんなの事を…!
私はまだ戦える…」
「リリ、シュアララルさんを回復後に、もう一度俺に1.5倍をかけてくれ!」
『キュー…』
「大丈夫だよ…
やるんだ、リリ!」
リリは戸惑いながらも、俺に1.5倍をかけた。
「援護、出来る方は頼みます!
あと、流れ弾の防御を!」
俺は久しぶりに腹から声を出した。
自分にこんな凛とした声が出せる事が不思議だった。
「私が続くわよ…!」
回復したスーベルシアさんが俺の後ろにピタリと立った。
「行きます!」
俺は身体を地面ギリギリに傾け、足で地面を蹴り、猛加速する。
心地よい感覚が俺の神経さえも鈍らせ、いや、研ぎ澄ませていく。
身体は軽い。
まだ、いける…!
クイーンゾンビの翼の刃が俺が居た場所の地面に次々と突き刺さったが、俺の動きを止める事は出来なかった。
「聖兎祝福斬!
いっけぇぇぇぇ!」
俺の剣はクイーンゾンビの首を斬り落とした…
その後の記憶は…
無い…
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