第9話 閃光

sideジャスク


深淵の森・キラーの中腹…

中ボス戦の一歩前だ。


邪魔者の雑魚エルウィーが居なくなって、俺たちの足枷は何も無いと思っていた。

だが…


「うーん、こっち…だったかなぁ?」


ロビルが辿々しく言う。


「こっちだった

しっかりしろよ!

何のために戦闘に参加させないで、道案内に専念させたと思っているんだ!?」


俺はロビルにブチ切れる。

討伐職のロビルには主に雑用を担わせたのだ。

みんなの食事、水分補給、道案内…

しかし、そのどれも上手くいっていない。


「ロビルさん、喉が渇いて…」


赤魔導師のステラが言う。


「えーと、ちょ、ちょっと待って!

アイテムボックスに…

あれ、もう無いみたい…」


「おい、ロビル…!

しっかりしてくれよ!」


「だって…

戦闘職の私にいきなり雑用なんて言われたって困るよ!」


それもそうなんだが…

あまりにも、チャチ過ぎる…


「と、とにかく、もうすぐ中ボス戦なので…

回復薬だけでも飲んでおきませんか?」


槍使いのモニカが言う。


「あぁ、そうだな…

すまない、ロビル、慣れないのに…

回復薬を出してくれ。」


「うん…

はい、回復薬だよ。

はぁぁぁあ、こういう時に、エルウィーが居たらね。」


ロビルがついそう口ずさんだ。


「くそエルウィーの話はするなってあれほど言ってるだろ!

アイツのせいで、俺たちは能力に見合った昇進を出来なかったんだぞ!


ふぅ…

いいか、いまこそ、俺たちの真価を発揮する時だ。

深淵の森キラーの中ボス戦はその礎となるだろう。


行くぞっ!

みんな!」


「はいっ!」

「うん!」

「…行こう!」


そして、深淵の森・キラーの中ボス、ハイファントと戦う事になった。


「回復!

ステラ、早くしろ!」

「ロビル、足止めして!」

「OK!

討伐の炎イヤマ・デ・ソビオ!」


ロビルの討伐の炎がハイファントにぶつかる。

しかし、ハイファントは左手の盾でそれを消し飛ばすと、俺たちに突撃してくる。


ダメだ…

回復も…

補助も…

攻撃も…


何一つ上手くいってない…


「て、撤退…!

総員撤退しろ!

ステラ、ハイファントを足止めするんだ!」


俺は全員にそう呼びかけ、ステラに命じた。


「くっ!

了解…!

危険な罠トランペ・ペティグラ!」


トラップが発動して、わずかにハイファントを足止めする事に成功した。


「撤退…!!!」


俺たちは全力で逃げた。

中ボスのフィールドは半径50メートル。

そこを超えると追ってこないはずだ。


そして、雑魚召喚魔術師が居ない、俺たちの栄光になったはずだった探索が、見事にボロボロの結果で終わった…


♦︎♦︎♦︎


ロビル、ステラは深い傷を負い、しばらくはベッドでの生活が続いた。

俺たちのBランクへの昇格はお預けとなり、俺は昼間から酒を飲む日々が続いた。

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