第7話 ブラッディタイガー

「火炎部隊、放射準備!

3、2、1…0!」


シュアララルさんの指揮で、後方の火炎部隊が一斉に火魔術を放った。

火炎魔法は的確にブラッディタイガーの目前に到達するが、ブラッディタイガーはそれをリフレクトした。


「まずいっ!

流れ弾が…!」


俺が叫んだ時、すでにマルスさんら盾隊が前方に出てリフレクトされた流れ弾を防いだ。


すごい…!

これが、華魔鬼凛の実力…!?

閃光とは…

正直言って桁違いだ…!


「攻撃に出るぞ!

前衛剣士部隊、全員突撃!」


シュアララルさんは華魔鬼凛の旗を振ってそう言った。


そ、そうだ…

俺も突撃しなくては…


だけど、足がすくんで…


その時、閃光パーティ・リーダーのジャスクの声が聞こえた気がした。


『とっとと出ていけ!

虫けらが!』


虫ケラ…

俺は長年勤めたパーティのリーダーにそう評された…

また…

ここでも…

同じ失敗を繰り返す…?


そんなのはごめんだ!!!


「リリ!

行くぞ!」


セイントラビであるリリには、4つ目の能力がある。

今まで使った事の無い能力だ。


それは、1.5ハーフアップと呼ばれるものだ。

1.5というのは、肉体の能力を敵の1.5倍化させる。

ブラッディタイガーが力1000ならば、俺の力は1500に。

魔力700ならば、俺の魔力は1050に。


だから、これを使いこなせれば、絶対に目の前の敵には負ける事は無い。

だけど、敵との力の差が大きければ大きいほど、身体は悲鳴をあげる…


ブラッディタイガー…

恐らく力は500を裕に超えるはずだ…


2分…!

それが俺のリミット!


1.5ハーフアップ、発動!」


俺の肉体は少し軋みながら、速度を上げ、力を爆発させ、魔力を発揮する。

気づいた時には、前衛の剣士達を抜き去り、ブラッディタイガーの背後の大木の幹に着地していた。


10秒…


15秒…


ブラッディタイガーの背に乗り剣を突き刺した。


次の一手で首を切り落とす!


「聖兎祝福斬!」


40秒…!


俺はブラッディタイガーの首を切り落としていた。

剣から、ブラッディタイガーの血が滴り落ちる。


40秒か…

結構かかっちゃったな…


着地したは良いものの足元から崩れ落ちた。


「おっと…!」


マルスさんが俺に肩を貸す。


「やるじゃねぇか!

エルウィーよ!」


「あ、あいつ、前衛の誰よりも速かった…よな…?」

「気づいた時にはブラッディタイガーの背後に…」

「二撃で仕留めたぞ!」


華魔鬼凛のみんながざわめく。


「…エルウィー君、後で執務室に来たまえ。」


シュアララルさんはそれだけ言うと、その日の探索は終わった。


や、や、やっぱりダメだったのかな…?


そ、そ、そうだよね…


どんよりした気持ちで俺はシュアララルさんの執務室をノックした。


「入りなさい。」


「し、し、失礼します。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る