第4話 入団試験

スーベルシアさんに正攻法で攻めても勝ち目は無い…!

いや、その前に、勝つなんて考えてはいけない…!

これは、俺の力量を測る為の試験なんだ!


でも、スーベルシアさんならば…

あの召喚魔術にも耐えられる…かも…?


だけど、初めて使うし…

俺の身体が持つかどうか…


そんな事をぐるぐると考えて居たら、スーベルシアさんが痺れを切らして大剣を振るった。


氷の剣よ、しなれエスパダ・デ・イエロ・インビナデ

ほらほら、考え事なんてしてるとやられちゃうわよぉ!?」


氷の渦巻く剣が、俺の腹部の服を僅かにかすめた。

背後に飛び退きながら、それをギリギリで回避した。


やっぱりセイントラビを召喚するだけじゃ勝てないっっっ!


をやるしか無い!


聖兎よ、降臨せよサンタ・コネホ・バハ

セイントラビの足、降臨!」


俺の足は変化し始め、真っ白の毛むくじゃらになる。

筋力は約5倍、脚力は約10倍にもなった。


やばい…

これは…

後でくるぞ…!


どけど、俺にはもうこのパーティしか無いんだ!

このままやるしか無い!


聖なる速さサンタ・ベロシダ!」


俺はスーベルシアさんに普段の最速の約7倍の速さで(正確にはわからない)、突撃した。


「くっ…!

なんてスピードなの!!!

氷の刃よ、降り注げコチラ・デ・イエロ・イエルベン!!!」


スーベルシアさんは強力な氷魔法を唱えた。

バトルホールの広範囲に氷の刃が降り注ぎ、それはもちろん俺にも突き刺さった。


「回復班!

エルウィー君を回復してあげて!」


勝負はあった…

負けだ…

俺はまた追い出されるのだ…


「エルウィー君、パーティリーダーのシュアララルさんの所に案内するわ。

さぁ、大丈夫?」


「え…でも、俺…負けて…」


「何言ってんのよ。

私相手にあれだけ戦えたら、十分よぉ!

最後のアレ、何やったのかしら?

スピードが跳ね上がっていたけど…

あんな召喚術は見た事無いわぁ。」


「い、いえ、大した事じゃ…」


そして、リーダー室へ向かった。


「シュアララルさん、エルウィー君を連れて来ました。」


「ご苦労。

スーベルシア。」


中には右目を髪で隠した男性が居た。


この人が華魔鬼凛のリーダー・シュアララルさん…


長身で、顔立ちは鋭いが整っている。

髪で隠してあった右目には、黒い眼帯が付いているのが見えた。


怪我したのだろうか…?


「君がエルウィー君か…

スーベルシアとの一戦、魔導モニターで見て居た。

試し試合でスーベルシアが氷の刃を発するとはね。

いや、良い物が見られた。

さて、君をどうするか、だが…」


「は、はい…」


ゴクリと唾を飲む俺…


「華魔鬼凛のパーティメンバーとして迎えようと思う。

ただし、まだ、臨時だ。

それでもよければ契約を結ぼう。」


「よ、よ、よ、よ、よ、よ…!!!」


「「よ…?」」


「よろしくお願いします!!!」


「あ、あぁ、よろしく…」


シュアララルさんは少し呆気に取られてそう言い、スーベルシアさんは笑いを堪えている。


こうして、俺は華魔鬼凛で臨時パーティメンバーとして働く事になったのだ。

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