第三章 ロウヒの物語 軽便鉄道誕生秘話
ミリタリー・オフィスは戦後も何かと忙しい
『散茶(さんちゃ)』制度が発足、これを利用して長年の懸案、『未開発世界軍事監視官制度』も動き始めた。
そのための交通手段として軽便鉄道という宇宙鉄道が計画された。
その管轄はプラネテスに任され、まずは関係部署にその説明を……
何の問題もないのであるが、最初の路線予定がティアマト宇宙、ヨミのマルバスが管理している。
先ごろ惑星カタカムナにレイルロードが敷設されたが、有力惑星はこの惑星カタカムナだけ。
ただこの星はネットワークの最重要惑星の一つ、三軍統合幕僚部の見解では、脅威となる勢力はないとのこと。
ティアマト宇宙は星系を抜け出すような科学技術の星はない、軽便鉄道にはうってつけとのこと。
本来はマルバスが簡易鉄道を敷設すればいいのだが、隣のラクシャー宇宙とデーヴァ宇宙の簡易鉄道敷設で手一杯。
そこで軽便鉄道をティアマト宇宙に敷設する話になった訳……
* * * * *
ラフロイグ戦争後もプラネテス・ミリタリーは忙しい、と、いうよりミリタリー・オフィスが忙しい。
長年の懸案であった『未開発世界軍事監視官制度』が発足することになり、その会議が明日、予定されているのだ。
このミリタリー・オフィスの秘書官としてはキャロライン・ノウルズとジリアン・フェネリー。
この2人はナーキッド・メトロ・カウンティのアメリカメイドハウスに籍をおいている。
「まったく!やっとラクシャシー・ヴィラと、デーヴィー・ホームの件を片付けたところなのに!これではアマテラス様とガブリエル様が可哀そうです!」
キャロライン・ノウルズとジリアン・フェネリーの2人が愚痴をこぼしています。
アマテラスとは愛人待遇麗人で、プラネテスミリタリーの最高司令官ドゥクス(総督)兼ネットワーク・オフィスの長官ランド・スチュワードの事。
ガブリエルとは佳人で、プラネテスミリタリーのトリブヌス・ミリトゥム(師団長)兼ミリタリーRCT――ミリタリー・オフィスと呼ばれている――のハウスバトラーの事。
「まあまあ、他の部署も『未開発世界軍事監視官制度』のおかげで忙しいのよ」
ガブリエルの言葉です。
「それより明日の会議の準備は出来ているの?」
「はい、ニラポ――ニライカナイ・トランスポーターの事、ニライカナイ民間区域の電気軌道――のミラポ――ミリタリー・トランスポーターの事、ニライカナイ軍事区域の電気軌道――への乗り入れの手続きは済ませております」
「会議室はミリタリー・オフィスの大会議室を当てます、途中の食事は一応『ベティ・プラネテス・セット』を用意できるようにしております」
「あら、『ベティ・プラネテス・セット』を提供してくれるの♪」
「はい、結構他部署にも評判が良いので♪」
『ベティ・プラネテス・セット』というのは、プラネテスの食堂で提供される名物料理で、でっかいコーンドッグと、レタスを山ほど挟んだ大き目のフランスパンのレタスドッグのセットの事で、廉価なわりに美味しいのです。
ニライカナイでは無料の食事が多々ありますが、こちらは少しばかり有料なのですが、実はプラネテスに所属する者は、プラネテスのイエローアンバーの軍務加算徽章を提示すれば無料となります。
各地の婦人戦闘団員のチェリーアンバーの軍務加算徽章もプラネテス所属に準じるという事で無料です。
一応、プラネテスに出向している者には、婦人戦闘団の雇員という扱いで、それ用の軍務雇員徽章が貸与されます。
婦人戦闘団のチェリーアンバーの軍務加算徽章と同じベースのもので、蕾はなく、バラの7枚葉が象嵌されています。
ラフロイグ戦争後はニライカナイのミリタリー領域、つまり軍事区域はこの軍務加算徽章、または軍務雇員徽章がなくては入れないわけです。
これはレイルロードステーションの軍事区域についても同様です。
軍務雇員徽章の発行はミリタリー・オフィスの管轄で、惑星世界管理局などいくつかの他部署にも預けられており、臨時の短期間貸し出しも可能となっています。
今回の会議に参加する軍人以外は、この臨時短期間貸し出しの軍務雇員徽章を身に付けてくることになります。
「まあ、前回で『未開発世界軍事監視官制度』の詳細は決まった、今回はそのための移動についての話だから、面倒な話にはならないだろう」
移動ツールであるレイルロード、はアーチダッチェス臨席のもと、ミリタリー三軍首脳とアマテラスで概略は決まっているのである。
「とにかく明日の会議の前にミリタリー・オフィス内でこの移動ツールについて詳細な検討しようではないか?」
移動ツールと呼ばれるものは『軽便宇宙鉄道計画』と名付けられていました。
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