お手付きの資格


「ネットワーク審議会で、ロマーニヤの直轄惑星の案件が流れれば、折角のハレム承認も消し飛ぶ可能性がある、近傍のハレム管轄となる可能性があるらしいのよ……」

「『百合の会議』内でも、ロマーニヤのハレム設立については異論がくすぶっている……」

「例の二つの騎兵隊が、ウェヌス様と『契る』約束がね……」


「一つ良い考えがありますよ」

 ドルシッラがある考えを口にしました。


「献上品は女孺(にょじゅ)と呼ばれ寵妃候補でしたね」


「女孺(にょじゅ)と采女待遇清女は寵妃候補になっているわ、名簿に載るわ」


「そこで、ウェヌス様と『契る』約束をして、お手付きになった女ですが、ウェヌス様にお仕えする全ての女がお手付きになった場合に、何らかの資格、つまり『お手付きの資格』を与え、この寵妃候補名簿に載せるわけです」


「それなら、いままでと変わらないのでは?」

「つまりこういうことです、『お手付きの資格』を幾度か取得した場合、寵妃とする」

「幾度か?」

「つまり何度か抱かれないと、一般の女官は寵妃になれない……」


「『お手付きの資格』の取得回数と、女官の資格の複数の条件が合致すれば、無条件で寵妃になれる……」


「なるほど……ネットワーク審議会は喜びそうだけど……百合の会議が何というかしら……」

「百合の会議で揉めるのは、夜伽の順が伸びることが一番の問題でしょう、しかし、この『お手付きの資格』を習得したということは、それなりの行為をしているわけで、それを複数回取得した者なら、実質夜伽の順を確保しているといえるのでは?」


「ハウスキーパー事務局に提案してみるけど……すぐとはいかないかも……いま、忙しそうですから……」

「戦争の後始末でね……でも……二つの騎兵隊は勇戦したと聞いているから、認めてもらえるかも……」


 ファウスティナはこの考えを、まずアマテラスにオルゴール通信で相談してみたのです。


「ウェヌス様にお仕えする全ての女、ということは管理官府所属の現地女性でも、婦人戦闘団の一般兵士でも、『お手付きの資格』を重ねれば寵妃……たたき台としてはいい案だ」


 いまだ戦時体制が解除されておらず、戦時最高幕僚部は健在、 各地の婦人戦闘団はプラネテス最高司令官であるアマテラスさんの管轄下にあります。

 現在ミリタリーRCTのハウスバトラー、ガブリエルさんが直接指揮しているのです。


 平時においても、婦人戦闘団の軍政を預かるホームの管理者に対して、軍事に対する助言などをしているミリタリーRCTです。

 戦時体制に移行、指揮権が移っても問題などはありません。

 今回のラグナロク戦争の結果もあり、実質的には平時においてもプラネテスの管轄と認識されたのです。

 

 ネットワークの戦略予備軍としての性格を持つプラネテスとしては、各地の婦人戦闘団の維持管理に常日頃努力を惜しまなかった結果、今回の実ったわけです。


 アマテラスとしても、一般婦人戦闘団員が『端女(はしため)』となり、ウイッチの下にとはいえ、ファミリアーというカテゴリーに分類されたわけで、ここから寵妃への道筋ができるということは大変ありがたいわけです。


 プラネテスは他の三大ミリタリー比べて、寵妃が少なく、ネットワーク内での発言力が弱い……三大ミリタリーの補助としての立場を強化したいと、常々考えていたアマテラスとしては願ってもない提案だったのです。

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