第二章 ファウスティナの物語 『散茶(さんちゃ)』は大変なのです

『ウェヌスの侍女、寝室係兼事務、大賢者神官長』の悩み


 惑星ロマーニャも目出度く、ハレム設立が認められました。

 しかしこれは特例中の特例、ハウスキーパー事務局が、ウェヌスさんの命令で手続きしたわけで、ハウス・ハレムが認められた以上、惑星ロマーニャは直轄惑星となるわけですが……

 ネットワーク審議会に代表が送れない……ネットワーク審議会にて審議がなされていない……

 そこで、『ウェヌスの侍女、寝室係兼事務、大賢者神官長』アンニア・コルニフィキア・ファウスティナ・ミノルは直接訴えに……

 しかし、条件が付けられた……


* * * * *



 惑星ロマーニヤの大半を占めるローマ・レムリア帝国、この帝国の国教ともいえるのが神聖ウェヌス教団。

 女神ウェヌスに仕える女たちの集団である。


 教団の女たちは『ウェヌスの巫女』と呼ばれ、女神ウェヌスに捧げられた女たち、ありていにいえば女神の『女奴隷』である。

 『女奴隷』といえど、女神の権威ゆえに絶対不可侵が保障され、数々の女神の加護がかかり、人々の尊敬を集めている。


 この教団の一般信徒は『ウェヌスの信女』とよばれ、信仰心を評価されると『ウェヌスの修女』となる。

 このローマ・レムリア帝国では、大抵の女性は『ウェヌスの信女』である。

 娘が2人以上生まれれば、1人は神聖ウェヌス教団で簡単な修行などして、『ウェヌスの修女』と成るのが慣わしとなっている。

 結婚をすれば、『ウェヌスの信女』に戻ることになるだけだが、『ウェヌスの修女』の間は、貞節を求められる。


 『ウェヌスの信女』は、ウェヌス・エリュキナ神殿に湧く『奇跡の泉』の水を飲むことができる。

 毎月のイードゥースの日を迎えて朝日が昇るまでの数時間、女神ウェヌスを信じる『ウェヌスの信女』が、体の悪い場所を念じて、直接手ですくって飲むと治るのであるから、『ウェヌスの信女』にならぬものはない、のである。


 この『奇跡の泉』はヌビアのフィラエ神殿にも湧いている。


 一応殿方にも奇跡の泉の効力の恩恵にあずかれるように、月の中日、日が昇るまでの深夜、神殿前の入口に小さい水受けを設置し、奇跡の泉より『ウェヌスの巫女』が汲んできた水を注ぎ、その注がれた水だけ、殿方にも効力を発揮するようになっている。


 『ウェヌスの巫女』になるには、『ウェヌスの修女』が自らを女神に捧げるか、『見習い巫女』から昇格するか、二通りの道がある。


 コルメン・ラクテウス(乳の出る円柱)から選抜献上されたのが『見習い巫女』、もともと女奴隷であるが、幼少時より女神をあがめるように徹底的に教育されている関係上、まず昇格となる。


 先ごろ、この水くみの役目を、『見習い巫女』でも行えるようになり、ローマ・レムリア帝国の若き男どもは、熱心に通うようになった。

 

 『見習い巫女』は美女ばかり、その上、間違いなしの処女であり、貞淑なのであるが、男がこの『見習い巫女』見初め、伴侶に望み、『見習い巫女』もその男の妻となるのを望めば、男が『下賜願』を教団に提出、調査がなされ、問題のない男の場合、女神よりその男に下賜という形で婚姻を認められる。


 ただもともと女奴隷であるので、なにがしかの代金を支払うことになるが、大体はその金額で、花嫁の嫁入り道具がそろえられる。


 神聖ウェヌス教団の『見習い巫女』を妻に迎えるには、それなりの覚悟がいる。

 『下賜願』提出後の調査結果で、拒否となれば、『下賜願』提出者の名前と『拒否理由』がローマ・レムリア帝国内に公告され、大変な恥をさらすことになるからだ。


 過去、珍しく親族のいる『見習い巫女』を脅迫、妻となるのを同意させた男がいたが、教団の調査により、脅迫が判明、詳細な公告となり、男は家財没収の上、処刑されたことがあった。


 公告もなく、祝福されての結婚となれば、男の清廉潔白が証明されることになる。


 教団幹部は『ウェヌスの侍女』と呼ばれ、女神の側近くで仕える女たち。

 このクラスになると女神の世界、天上世界を行き来できるといわれている。 


 そして、その最高幹部である、『ウェヌスの侍女、寝室係兼事務、大賢者神官長』アンニア・コルニフィキア・ファウスティナ・ミノルは、その天上世界から、ウェヌス・エリュキナ神殿戻ってきた。

 ある問題の為に、ネットワーク審議会と交渉をしてきたのです。

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