ウェヌス・エリュキナ神殿警護隊の戦闘糧食はうまいのです


 二つの騎兵隊は、敗走する敵兵を追いながら砦の城門を目指します。


「隊長!城門が閉まり始めました!」

「敗走する見方を見殺しにするつもりか!構わぬ、ヌミディアとサルマタイの第四、第五デクリオは城門が照準に入りしだいねらえ!」


 城門の扉って、いくら頑丈につくってあるといえど木製ですからね。

 金属板で覆われている扉も、八九式重擲弾筒改の集中砲撃で崩れ落ちました。


「扉が壊れたぞ!そのまま敵砦に突入せよ!抵抗する者は皆殺しだ!」

 抵抗する者とはいいましたが、動ける男は片端から殺しています。


「抵抗はなくなりました、まあ残ったのは女子供と重症の男ばかりですがね」

 ヌミディア女騎兵隊のオプティオからの報告です。


「案外にあっけなかったな、後続のアルビヌス正帝に伝令を走らせよ、我、ジュート人の三個コホルスを殲滅、デーンの砦を陥落させる、後詰を要請する」

 帰って来た伝令が、アルビヌスの命令を持ってきました。


「ほう、このまま砦を守りながら休憩せよとある」

「全軍、警備体制でこの砦をしばし防衛する」


「とりあえず飯にするか♪警備の者はご苦労だが飯を先に食ってくれ、残りの者は警備体制が整ったら飯を食ってくれ、後詰の友軍が来たら酒を飲んでも良いぞ!」


 ウェヌス・エリュキナ神殿警護隊の戦闘糧食はアウグスタ婦人兵団のもので、テラのイタリア軍の戦闘糧食となっています。

 このイタリア軍の戦闘糧食、朝昼晩の三食分が一つのパックとなっています、でかいのですよ♪


 中には折り畳み式の簡易式のコンロ、固形燃料も入っています。

 驚くべきことにナイフ、フォーク、スプーンのカラトリーセットが三セット入っているうえに、歯ブラシ三本、歯磨き粉が一本、紙製のゴミ袋が三枚……

 ただオリジナルには入っている浄水剤は入っていません、端女(はしため)でも使用できるミリタリー補給カタログには水とお湯がでますのでね、必要ないわけです。


 パン代わりはビスケット、クラッカーみたいなものですよ。

 まあ、ミリタリー補給カタログには乾パンなんてものがありますのでね、足りない方はどうぞ♪


 飲み物は二種類のコーヒー、一つはカプチーノです♪レモンティーもありますね♪


 さらに驚くべきことにグラッパが入っています♪

 30ミリリットルのミニボトルですけどね、ここの女たちはこの量では屁でもないのです。

 この戦闘糧食は7種類あるようですよ。


 婦人戦闘団の中でもアウグスタ婦人兵団の戦闘糧食は一番うまいといわれていますが、単価もそれなりにします。

 規定の単価の上に、ホームのウェイティングメイドの判断で追加料金を支払うわけです。

 ロマーニャ・ホームの最高責任者、『ウェヌスの侍女、寝室係兼事務、大賢者神官長』のアンニア・コルニフィキア・ファウスティナ・ミノルさんが決めたようですね。


「とにかく連中の食事はうまいものを用意しなくてはね、まずいと暴動を起こしそうよ」

 との意見のようです。

 とりあえずかなり量がありますよ、ウェヌス・エリュキナ神殿警護隊はマッチョな女ばかりですからね。


 アルビヌス正帝の軍が来たのが二日後の昼過ぎでした。


 ガウダさんが酒を許可したので、戦闘糧食のグラッパのほかにミリタリー補給カタログからお酒も取り寄せられるようになっています。

 さすがに酒類は指揮官の許可がなければ取り出せませんからね。

 このお酒はコーンウィスキー、それも非熟成のもので、かなりうまいと評判です。


 惑星マルスのコーンウィスキーのメーカーがどしどし製造しているものです。

 本来このメーカーの製品は短期熟成して広口の密閉瓶に詰めて売られていますが、物資補給部に収めているものは非熟成で度数も50度で180ミリリットル、ポケットサイズのペットボトルに詰められています。

 なんせトウモロコシは信じられないほどお安く大量促成栽培が可能、ミリタリー補給カタログにも載せられるわけです。


 夕食前にお酒解禁となり、その夜は盛り上がっています。

 ベロベロの酔っ払いが続出、熱いのか上半身裸どころか素っ裸になって飲んだ者もいたとか……

 アルビヌスの軍団兵は目の保養をしたようですが、さすがにガウダさんとアキリアさんは始末書を書かされていました。


 FIN

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