共通の強敵?


 「『来年までにファミリア―のサバトに呼ばれるように努力してください』、そういわれていたな」

 「確かに」


 「ファミリア―のサバトの主催はミリタリーオフィスと、ファウスティナ神官長から聞いている、今回は『契りを結ぶ約束』の為、問題なく呼ばれたが、来年も呼ばれるかは分らない」


 ……


 「つまり問題はミリタリーオフィスの心証ということなのだな?」

 「そうなる。」

 再び堂々巡りになりそうな時、

 ガウダに一つの案がひらめいたのです。


 「アキリア、一つひらめいたことがある、聞いてくれ」


 ガウダの案というのは、共同で強敵と戦うこと。

 サルマタイ婦人騎兵隊とヌミディア女騎兵隊は、今までともに戦ったということが無い。

 『五皇帝の年の内乱』に両者は参戦したが、同じ戦場で助け合ったことが無い。


 一度、共通の敵に対して共同で戦えば、互いに戦友との認識に立てるのではないか、とガウダはいうのです。


「共通の強敵?確かにいわれればその通りだが、どこにその強敵がいるのか?」

「北辺に跋扈するデーン人がいるではないか。」


「デーン人?」

「連中はブリタニカを略奪している、西のアルビヌス正帝は連中の根拠地であるスカディナヴィアに侵攻しようと計画している。」

「しかし、我らは騎兵集団、海を渡るのは得意とはいえない。」

「そこよ、スカディナヴィアに侵攻しようとすれば、まずユランに侵攻するはず、なら船など乗らなくて済む、デーン人は強敵だろう?」


「ユランならジュート人ではないのか?」

「このごろジュート人はデーン人に押されているらしい、しかしどちらでもいいではないか?」 


「そういえばアマテラス様から、軍事顧問団が派遣されていたが、我らにも新型の装備が支給された、いまならデーン人など難なく撃破できる!」


 この2人、もともと単純ですから、簡単に話が一致したようで、アルビヌス正帝に参戦を申し入れたようです。

 参戦は簡単に認められましたが、費用などは実費とのことでした。


 アルビヌスは例のローマ・レムリア帝国が唯一の統一政体となるように、ゲルマニアを制圧しようと考えていたのです。

 その前にブリタニカを略奪するデーン人を何とかしなければ、ゲルマニアを侵攻した時、北から襲撃を受けるわけです。


 アルビヌスとしては、ユランでデーン人の南下をとめてくれれば、心置きなくゲルマニアと戦える……

 かなり天上世界の軍備を受領している両隊の参戦は、願ったりかなったりなわけです。


 6月、ユーニウス、両隊はアルビヌスの軍の先鋒として出陣したのです。


「なんでサルマタイの連中と一緒に行軍しなければならんのか!」

「それはこちらの言葉だ、我らの足を引っ張るようなことはするなよ」

「なんだと、お前らこそ邪魔などするなよ」


 こんな罵りあいをしながら、両隊はユラン――ユトランド半島のこと――の根元までやって来ています。

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