第10話:雨月の12日に届いた手紙への返事

 この手紙はトゥードル・ゲンジーがクレメリア革命暦649年1月29日(雨月レイディンの12日)に送った手紙に対してベーデン・モンバドゥール氏が送った返事である。


 お手紙ありがとうございます。早速冒険者ギルドで適性検査を受けてきたのですね。

 それにしてもこれはなかなか興味深い結果となりましたね。あなたが力持ちなのはよく知っていましたが、物を投げる力がA評価になるとは思っていませんでした。基本的にA評価というものはなかなか出にくいものですので貴方の光るべき才能であると言って良いでしょう。それにしても、腕力と投擲適正が高いのは納得ですが、走力が高いのも気になりますね。私の推論ですが、貴方が記憶を失うまでは狩人のような生活をしていたのではないか?と推測できます。まだクレメリアに確固たる魔法体系が確立するまでは、クレメリア人は弓や投槍による狩猟生活をしていたといわれています。おそらく貴方の世界もそのような生活をしており、狩人としての血がトゥードル自身の実力として発揮されたのでしょう。

 残念なのは魔法に関しては不得手であると言うことが判明したことです。我々久遠エルフの民は魔法を得意とする種族です。もし貴方に魔法の才がありましたら稽古をして素晴らしい魔法使いに仕上げようと思いましたが、それが叶うことはなさそうです。しかし適性がないからと言って全く触れないということは推奨しません。相手がどのような魔法を使ってきたのかくらいは分からないと自分の身も守れません。なので、引き続き使えないとしても魔法の授業を私のところで受けにくるといいでしょう。困った事がありましたら気兼ねなく私を訪ねてください。

 改めまして、適性を知った上で準備をした方が良いものをここで記しておきます。

 <モンバドゥールのメモ>

 ・手斧

 ・投げナイフ5〜6本

 ・軽快に動ける程度の皮鎧

 ・ヘルメット

 ・最低二週間は食いつなげる保存食

 ・傷に効く薬草

 ・乾いた布

 ・ロープ

 ・背負い袋

 ・薬草の調合辞典

 ・寝袋

 ・着替え

 ・石鹸

 ・ピッキングツール

 ・その他投げられる小道具(発煙筒など)


 あくまでこちらに記載したものは最低限のものになります。これ以上足す上では私は何も言いません。あと持つべきは優しさです。貴方なら心配ありませんが、冒険者は助けて、助けられての関係が肝要です。あなたが誰かを助ければ、必ずしも誰かが貴方を助けるでしょう。旅人は一人で旅を続けられないとは2000年前の偉人トリピロスの格言です。誰かに支えられていることを強く意識なさい。貴方の旅が幸多きことを願っています。


 ベーデン・モンバドゥール

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