十蹴 友情のブレット

「授業が終わったんじゃああああああああああああ。サッカー部に行くんじゃああああああああああああ」

「サッカー部? サクマヒメちゃんはサッカー部なのですか?」

「そうじゃああああああああああああああ。ウラララ‼ も来るんじゃああああああああああああああ」

「え?」

「友達だから来るんじゃああああああああああああああああ」

「友達……」

 ウラララ‼ は少し顔を伏せ、考え込む。彼女は今まで友達というものがいなくて、サクマヒメのような存在は光だった。しかし、サッカー部か。春麗コーポレーションは勿論サッカー用品も取り扱っており、サッカーへの親和性は高い。それゆえ、ウラララ‼ は

「ええと、見学させてもらっても?」

「勿論‼」

 初めて出来た友達と、初めての部活動というものに関わっていく。


「ん? サクマヒメ? その子は?」

「友達のウラララ‼ なんじゃあああああああああああ。今日ウチのクラスに転入してきたんじゃああああああああああああ」

「へえ……」

 平はウラララ‼ に「ども」と軽く会釈し、ウラララ‼ は「どうも」とこちらも頭を下げる。

「サッカーやるようには見えねえけど」

「失敬な‼ ウラララ‼ はヤる子じゃぞ‼」

「そうなの?」

 ウラララ‼ を庇うサクマヒメだが、彼女はウラララ‼ のどこを買っているのだろうか。平にはよく分からないが、ウラララ‼ にもよく分からない。サクマヒメは一体何を言っているのだろうか。

「ウラララ‼ の履いてる靴をよう見い‼」

「靴? あ、春麗!」

「いやこれは私の家が」

「え?」

 ウラララ‼ は一応二人に事実を述べておく。

「あー、君の家春麗コーポレーションなんだ。サッカーとかやったことある?」

「いえあの、恥ずかしながらスポーツに縁がなく……」

「まあみんな最初は素人だけど……」

「ん? 誰その子?」

「あ、シノブ」

 ウラララ‼ はシノブにも事情を伝えておく。そしてシノブは少し考え込み、「成る程。じゃあちょっと試してみよう」と体験版みたいな感じでウラララ‼ の身体をまさぐる。

「え、ちょ」

「筋肉、骨格。うん、筋骨は意外としっかりしてるな」

「それは多分、哀空との」

 ウラララ‼ は哀空とプロレスごっこをしており、割とバイタリティ高めなのだ。

「よし、君キーパーやってくれよ。キーパー今モブしかいないんだ」

「え? キーパー?」


 牛尾中学校

 FW シノブ 平

 MF サクマヒメ

 DF 七瀬 羽葉堂

 GK ウラララ‼


 ウラララはシノブにキーパーとしてのノウハウを叩き込まれる。キーパーは他のポジションほど戦術的な部分がなく、案外素人がやりやすいポジションといえる。

「みんなでウラララ‼ に叩き込むんじゃああああああああああ。まるで夢みたいなああああああああああああああああ。友情のブレットおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「友情……ふふっ」

 ウラララ‼ は親友サクマヒメの優しさに触れ、少し噴き出してしまった。人は嬉しいと噴き出すのだ。『友達』というものは、ウラララ‼ にとって『ウンコ』の次に熱いものなのかもしれない。

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