第4話
さて、3週間がたったある日、部屋が妙に片付いていることに気づいた。
「ん?」
「おはようございます」
「あ?おま、バシリオ!!何でお前ここにいるんだ」
「辞めてきました」
「は?なんて?」
「近衛騎士団は辞めてきました」
「何でだよ」
「やはり私には合わないので」
手にはまた雑巾とバケツを持ってる。俺はバシリオを呆然とみつめた。
「は?合わないじゃないだろ、頑張れよ」
「3週間も頑張りました」
「3週間しかだろ!!1年行ってこいって言っただろ」
「嫌です」
「いやって、ばか、駄目だよ、こっちにも計画ってもんがあるんだから」
「何ですか計画って」
「だから……」
お前があっという間に他の騎士を追い越して、七大将軍の1人になって、伯爵の地位をもらって、俺と婚約する計画だよ。
「だから、その、俺を」
「リュラ様を?」
「お前が」
「私が?」
「……っ!!とにかく、戻れ!!今すぐもどってもっかい近衛騎士団に入ってこい」
「嫌です」
「嫌じゃない、我が儘を言うな」
「何で我が儘なんですか、私は騎士になりたいわけじゃなくて、リュラ様のお世話をしたいんです、この3週間、リュラ様の世話を誰がしてるのか気になって気が気じゃなかった」
「だ、誰も別にお前の変わりなんかいない」
「ならば、そばに置いて下さい」
ひしっと、両手を握られ、真剣な眼差しを向けられると、顔が火照る。くそ、こいつ、真面目な顔すると本当にかっこいいんだよ。
「だめだ、お前はこれから腕を上げて七大将軍にならなきゃ」
「なれるわけ無いでしょう!!」
「諦めるな、なれる、パッキラ将軍が頑張ればなれないこともないかもしれないと言ってたし」
「そんなあやふやな言葉信じないで下さい、私自身がなれないって言ってるんです」
「ならなきゃ、結婚できないだろっ!!」
あ、言っちゃった、パァァァと顔が赤らむのが解る。ばか、俺、言っちゃった。
「結婚?私がですか?私は誰とも結婚なんかしません」
「は?」
「ずっとリュラ様の従者でいたいので」
「でもさ、従者って、もし俺が誰かに嫁ぐ時どうするんだよ」
「ご一緒についていきます」
「だめだろそんなん、何処の世界に乳兄弟を連れて嫁ぐやつがいるんだよ」
「従者ですから大丈夫です」
「いやまて、問題はそういうことじゃない、俺が、誰かに嫁ぐって、お前は良いのかよ」
嫁ぐってことは、俺がお前以外の人とツガウってことだぞ、解ってるのか?バシリオは、苦々しい顔をした。
「そんなこと解ってます、良いもなにも、ずっとそれはいつかそんな日がくることは覚悟してます」
「なんだよそれ、俺が他のやつのものになって良いのかよ」
「リュラ様は……第三皇子です、私が良いとかそんなこと思うなんてできません」
「なにそれ」
俺は、飲みかけたお茶をバンッとテーブルの上に置いた。茶が溢れる。
「縁談を受ける」
「え?」
「もういい、結婚する、どこの国でも誰でも良い、来てる縁談の一番上のやつと結婚する、そして、お前は連れていかない、勝手にしろ」
「なぜですか……リュラ様」
「何故かくらい、じぶんで考えろ!!」
バンッと、扉を開けて部屋を飛び出てやった。ばか、バシリオのバカ。
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