第3話

バシリオをパッキラ将軍の処へ行かせて1週間がたった。少しはましになったかと、様子をこっそり見に行くことにした。


騎士養成所の、野外場は王宮の端にあり、城の城壁上通路から覗くことができる。3階の城壁上通路から、バシリオを探すと、端っこの方で剣を振っている。側にはあれは、カイル兵長だろうか、厳しく指導を受けているが、この1週間で少し感肉がついたように見える、もともと骨太の良い体格をしていたし、筋肉がつけばもっと見映えはよくなる筈だ。


ストレートの黒髪が少し伸びて、野性味がでて良い感じに剣士ぽくなってる。あれはあのまま伸ばして、後ろで束ねても良いかも。


思った通り、太い腕から振り下ろされる剣は軽々としていて、あいつはどう考えても戦士向きだ。俺の部屋で茶を入れている場合ではない。


もっと鍛えて、七大将軍の1人くらいになれば、俺を娶ることもできるだろう。さすがに、茶くみの従者に、第三皇子である自分が嫁ぐわけにはいかないから。


まぁ、もともと俺の乳兄弟な訳だから身分は低くないけど、もし足りなかったらパッキラ将軍の養子にでもいれて、身分は伯爵くらいを与えて、暮らす城は俺の領土にあるカーロイル城で良いし。婚約は全てが整ったらすぐだ。


「ふん、まぁ、俺を手に入れる為に汗水垂らして頑張れ」


ふふんと、自分が立てた計画は素晴らしいと思えた。この国は中堅国だが、オメガである自分には引っ切り無しに縁談が届く。俺は病を理由に断っているが、さすがに、18歳ともなると、まだ行き先が決まらないのかなどと勝手な世話を焼きにくる貴族が増える。


夜会へ出席する度に、何処かの国の王子様、公爵さま、王弟殿下やらが言い寄ってくるが、俺は……俺だけを一途に愛してくれる男がいい。


バシリオの献身は小さい頃から嫌ってほど身に染みてる。何をするにも俺を優先して世話を焼き、はっきりいって母親よりも、誰よりも俺を一心に育ててきた。二つ年上なのに偉ぶったりもせず、俺の言うことはなんでも聞く。


つまり、愛だ。あいつは、俺だけを愛してきたし、俺をこの先も愛し続けることは明白。


そこまで愛されているのだから、報いてやらねばと思うのもまた愛だ。


「頑張れよ、バシリオ、いつか俺を娶るために、お前はもっと努力をすべきだ」


バシリオならば、きっと七大将軍の1人くらいなれるはず、だって、俺が見込んだ男なんだから。最悪なれなくても、パッキラ将軍の地位を金でゴニョゴニョ。


なんせ、俺はモテるから、あっちこっちの貴族から集めた軍資金もとい、プレゼントの山を売れば、地位の1つや2つ簡単に買えるだろう。そもそも、父である皇帝は俺に滅法甘い。なんせ末っ子だからな。上二人を厳しく育てた反動で、俺には激甘だ、ついでに従者にも激甘。見ず知らずの土地に俺を嫁がせるくらいなら、自国の騎士にやりたいみたいなこと前からボソボソ母に言ってたし。


後はバシリオが本気で頑張るだけだ。多少スタートが遅い気もするが大丈夫だ。気合いで頑張れ。





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