第4話
どうやら賞金首について思いを馳せたのはフラグだったらしい。
「もっと飛ばして、ハンゾーくん! 今の私たちじゃ、アイツには勝てない! 捕まったら終わり!!」
「分かってる!! クソ、でかい図体して足速ぇなアイツ!?」
どうも、荷鳥半蔵です。
ただいま、絶賛化け物に猛追されとりまする。
人間を優に超える巨大な身体。
頭から生えた二つの角。
そして、両手に持った二つのクソデカ包丁。
なま〇げを彷彿とさせるその怪物の名は、砂鬼。
今まで見たどんなホラー作品の化け物たちよりもおぞましい叫び声を上げながら、鬼が砂漠を爆走している。
こわっ!!
こっわっ!!
いくら賞金首って言ったって、あんな奴狩れるわけねえだろ!!
しかも万が一、億が一狩れたとしてもたった1000ゴールドだぞ!? 割に合わねえにも程があるだろいい加減にしろ!!
「金属探知はどうなってる!?」
「今はそれどころじゃ……! でも、一応目星はついてる!! 時間さえあれば……!」
「ガウッ!! ガウゥッ!!」
くっそ!!
今もアンゴルモア三世が必死に攻撃しているけど、効く効かない以前に全然当たらねえ!!
バズーカは包丁でずんばらりんされるし、ガトリングは包丁で防がれるし!!
包丁万能すぎんだろ俺も欲しいわ!!
ミラーに映る砂鬼の姿が、徐々にではあるが近付いてきてる……車より足速いとかおかしいだろアイツ!!
どうする、どうする……。
時間は正直言ってあんまり無い、思考時間は僅かだ……!
って、マジか!?
あの野郎、包丁を片方こっちにぶん投げてきやがった!!
美しい投球フォームから放たれる包丁が、見事目の前の砂に着弾!
超!! エキサイティン!!
いやアイツコントロール良すぎだろサイ・ヤング賞取れるわ!? 沢村賞でも可!
「うおおお!?」
「きゃああ!!」
「キャウゥゥン!?」
くっそここまでか!!
車が停まっちまえば、俺たちゃ捕まって全滅だ……仕方ない、やるしかねえ!
拾われた命の使いどころさんよぉ!!
「ミラちゃん──」
「え……」
「後は任せた!!」
「ガウッ!?」
どうせ死ぬなら一かバチか、男なら……!
可愛い命の恩人を助けるぐらい、やってみせらぁ!!
「──ハンゾーくんッ!?」
砂鬼が迫る中、後部座席のスペースに置いておいたおニューのライフルを手に取り、一人駆け出す。
無論、その先は砂鬼の居る方へ!!
「ヴォォォォォォッ!!」
! WARNING ! ! WARNING !
賞金首 砂 鬼
懸賞金 1000G
討 伐 開 始 !
「って、ちょ、まぁぁぁっ!?」
「ヴォガァァ!!」
ヘタクソでも当たる距離に着いた途端、待ってましたと言わんばかりに砂鬼が両手の包丁を地面に叩きつけた。
いろんな意味でマグロになるのはまだはえぇんだよなぁ!!
うおぉ唸れ古来より伝わる決死のハンターダイビングゥゥゥ!!
「っぶねぇ! お返しだオラァ!!」
「ヴガァ!!」
間一髪で何とか攻撃を躱し、無様に転がりながら体勢を入れ替えてトリガーを引く。
この距離ならさすがに──!!
「いっ!?」
ウッソだろお前これも防ぐのか!?
おのれクソゲーも大概にしろ!!
包丁で弾を全て防ぐとか、今日び死にゲーでもんな理不尽して来ねえぞ!!
お、あ、待っ!?
「ぬおぉぉぁぁあ!? こっちの攻撃を防いだその手でカウンターアタックはナシ! 当たったらどうすんだコラァ!!」
「ヴガァァァ!!」
お返しの包丁攻撃は丁重にお断りし、ごろごろ転がりつつ急いで立ち上がる。
イテテッ! いい感じの持ち方が分からねえから自分のライフルが身体に当たって地味に痛い!
負けるな、恐怖に負けるな……!!
引けば老いるぞ……臆せば死ぬぞ……!
どんなに無様でもいい、虚勢でもなんでもとにかく負けねえように叫び続けろ!!
少しでも時間を稼げ!
「このっ!!」
「ヴガッ、ヴッ、ヴッ、ヴガァァ!!」
「くっそマジで当たんねえな!? あーもうせめて手榴弾みたいな爆撃系のアイテムがあればなぁ! もっと街を漁ってみるべきだったか……!」
キン! キン! キン! キキン!!
口であらわすならこんな感じ、マジで。
面積の広いクソデカ図体なのに、クソデカ包丁を素早く器用に動かして守りやがる。
つーかよくよく考えるとライフル弾を容易く弾く包丁イズ何!? 何でそんな無駄に硬ぇんだよ!
あっ。
やべ、砂に足をとられて──。
「ちょっ、待って、待ってくださ……」
「ヴガァ」
ザン。
左腕を、斬られた。
斬られた?
熱い……痛え……血が……!!
「っぐあぁぁぁああ!? 腕、俺の、俺の腕ぇぇえぇ……!!」
「ヴッヴッッ」
「何笑ってんだクソがァ!!」
「ヴガァ」
「クソ、当たれ、当たれ、当たれェェ!!」
なんでもいい!
どこでもいい!!
頼むから、当たってくれ!!
「ヴヴゥ」
あっ──
やめ、やめろ、やめろよ馬鹿野郎!!
ザン。
今度は、右足を斬られた。
「ぐ、ぐぎぃぁぁあ!? でめ゛ぇ、趣味、悪ぃぞ……!!」
こいつ、遊んでやがる。
ああくそ、やっぱりダメか。
俺なんかじゃ時間稼ぎが精一杯で、命を天秤にのせてもダメージ一つ与えられない。
……ミラは、ちゃんと逃げられたかな。
アンゴルモア三世……いや、モアがついてるんだし、大丈夫か。
「ヴガァ」
どすっ、と、俺の銃が落ちる。
砂鬼が俺を食べようと、でっけえ手でつまみ上げたからだ。
まあ、降って湧いたロスタイムにしちゃ、女の子一人助けられただけ上出来だろう。
あぁ、意識が朦朧として……。
ん?
斬られたはずの左腕、感覚があるんだけど気のせいか?
足も、なんかこう……まるで再生したような、不思議な感覚が……。
……気のせいじゃ、ないっ!?
「何だかよくわかんねえけど、喰らえオラァ!!」
「ヴギャッ!?」
──殴れた。
無くなったはずの左腕で。
やっぱり気のせいじゃない!!
俺の身体、なんか再生してるんですけどォ!?
え、これが本当の転生特典って事?
アンデッドか俺は!!
「あだっ! へ、へへ……ちったぁ効いたかよ」
目玉を殴られた砂鬼が怯み、俺は地面に落とされた。
あー、ふらふらする。
ダメージというか、疲労的なアレまでは元に戻らんパターンっぽいな。
とりあえず今のうちにライフルちゃんを回収して、そんで全力ダッシュしてできるだけ距離をとる!!
「うひょー!? 暴れんな! 再生するのは分かったけど痛えもんは痛えんだぞ!!」
クソデカくはあるが人に近い形をしてるだけあって、急所は人体とそう変わらないのだろう。
砂鬼は未だに目玉を抑え、がむしゃらに暴れている。
よし、ひとまずこれだけ距離を取ればいいだろう。
弾丸パーティーじゃゴラァ!!
「怯えろ!! 竦め!! クソデカ図体の性能を活かせぬまま死んでゆけぃ!!」
「ヴガァッ!?」
俺自身も予想外だったんだ、対面する砂鬼もまさかパッと見ただの貧弱な人間である俺の身体が再生して反撃されるなんて、夢にも思っていなかっただろう。
当たる、当たるぞ!! 俺の弾が! 当たるぞぉぉぉ!!
これこのまま倒せちゃうのでは?
そんな舐めた事を考えていたのが悪かったのか──。
「は?」
砂鬼が、跳んだ。
目測でおよそ5メートルはある巨体が、跳んだのだ。
高く、高~く。
調子に乗るの、ダメ、ゼッタイ。
「フギャッ」
ぷちっ。
怒り狂う砂鬼の巨体が見事俺に着弾し、俺の身体はトマトよりも呆気なく潰され、砂漠のシミになった。
「ヴガァァァ!!」
勝利の雄叫びを上げる砂鬼。
さすがに死んだと思った?
「生きてるんだなぁ、これがぁ!!」
「ヴァ!?」
なんで生きてるんだよ!!
とでも言いたげな顔をする砂鬼。
ワイトもそう思います。
ぷちっと潰されても、無事に再生しちゃったんだから仕方ねえだろ!!
「あ?」
「ヴギャァア!?」
は? え?
なんか、いきなり砂鬼の顔が爆発したんですけど……。
「ハンゾーくんッ!! よかった、生きて……なんで裸なの!?」
「は? ミラ? え、うぉっ!?」
マジだ、なんで俺裸なの!!
もしかして全身マッシュハンゾーになったけど服は再生できないからか!?
つーかなんで戦車に乗ってんの!?
あっ、探してた奴を見つけたのか!!
「ヴヴ……!!」
「ウッソだろお前、戦車だぞ!? 戦車の主砲が顔に直撃しても生きてるとか、それもう生物じゃねえだろうが!!」
「言いたいことは山ほどあるけど! ハンゾーくん、急いでこっちに!!」
「あ、はい」
異様にガードが硬い上に耐久力まで異常にあるとかふざけろ。
まさしく
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