第2話

西郷と名乗った大男は大抵の物が新しく見えているそうで、こういう場合、大体歴史の本があれば喜ばれる、という漫画知識で歴史の教科書を渡した。西郷さんは喜んで読んでいる。たまに歓声をあげる。


「面白いですか?」

「予想通りと予想外が沢山あっ」


傍らで見ていた妻は楽しげだ。次は何を渡そうか本を持ってきている。どうも次は乗り物の本のようだ。


「西郷隆盛さんって西南戦争で亡くなったんですよね?何でこんな所にいるんですか?」

「そいがおいにもわからん。いつん間にかあそけおった」

「じゃあ西南戦争に行ったのは覚えているの?」

「そがん」

「ふうん。何てファンタジー!転生物だわ」


妻は喜んでいるが、俺はどうしたものか。まさか過去に送り届けるとか無理だよな?鹿児島に連れて行っても意味ないようだし。そもそも本当に西郷さんなの?そう思い込んでいる人とかどうだろう。ないか。ぼちぼち考えよう。とりあえず食費が増えるな。

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