第4話 事情を聴くならば…
「弄られキャラっていうか…。ほら、そういう奴って先輩のとこにも居ませんか?」
美沙は曖昧に頷くとバッグを肩に掛けた。
「じゃあ私先に帰るから、副部長、カギはちゃんと掛けてね?」
白南風は頷き、美沙が出て行くのを見送った。
「久保田かぁ…」
「久保田だよ…」
残った二人は顔を見合わせて唸った。転落死が自殺かどうかはまだ分からないにせよ、それは白南風達にとって意外な名ではなかった。
久保田俊彦は白南風と同じ二年S組で、クラス委員を務めていた。性格は大人しく、お世辞にも社交的でない俊彦がクラス委員をやっているのも〈押しつけ〉られたからだ。
二年進級時に成績と志望進路で組み分けをされる私立・恒常学園でS組は難関国公立メインの生徒達が集まる。内申も大切とは言え、受験期に入る時点で〈雑務〉を引き受けてなどいられない――というのが生徒らの本音だ。俊彦はクラスの大勢から〈推される形で〉クラス委員をする羽目になった。イジメが始まったのは丁度その時期からだった。
「私らもジジョーチョーシュってされるのかな?」
せわしなく出入りする警察関係者を避けるように正門への道を歩きながら綾音が白南風に言った。
「事情聴取ぅ?なんで!綾音も私もグラウンドに居たじゃないの!なんでそんな目に遭わなきゃなのよ?てかそれ言うなら久保田ってクラスよりも入ってる写真部の方が仲の良い子が居たみたいじゃない?事情を聴くっていうならその誰かか――」
二人は顔を見合わせ、同時に同じ名を口にした。
「小網真由……」
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