第3話 アレ
「え!久保田なの?」
ラクロス部の部室で着替えていた白南風の元に情報を持ってきたのは同じ二年の常田綾音だった。
「うん…。いま生徒会の用で顧問の藤枝のとこにいったんだけど、教務室は物凄い騒ぎでさ、警察官とかも何人も居て、で、聞こえてきたんだわ。二年の久保田俊彦――って。保護者への連絡は済んだとか、そんなこと喋ってたよ…」
「久保田…かぁ…。それは…」
白南風と綾音が見せた表情に三年の鈴木美沙が首を傾げた。
「知ってる子?」
綾音は答えに困ったように白南風を見た。
「うちのクラスの男子なんです、けど…」
「何かあるの?その子」
白南風は少しキツくなったブラウスのボタンを留めながらボソリと呟いた。
「何かっていうか…。つまりアレなんですよ…」
「アレ?何よ、アレじゃ分からないじゃない?」
癖で見せる眉間の皺を指で直す真似をして白南風が答えた。
「イジメ――って、やつです」
「え…あぁ…」
美沙は如何にも〈マズいことを訊いた〉というような顔で視線を逸らした。知らない方が良い事というものは確かにある。この情報を美沙は自分の中でそれに分類したようだった。
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