本当の美しさ

星之瞳

きっかけ

あおいお買い物付き合って」

「いいけどどこに行くの?」

「いいとこ」

私は仕方なく美奈子みなこについていった。着いたのはデパートのコスメ売り場。私が戸惑っていると

「この子に一式揃えてください。」

「美奈子こんなブランド物の化粧品私買えないよ」

「あんたも、プチプラだけじゃなくたまには買いなよ。あ、この口紅紹介料に一緒に買ってね」

「待って!美奈子!」私が止める間もなく、美奈子は口紅を持って売り場から去って行った。私は仕方なく口紅の代金を払って帰ろうとしたのだが

「お客様フルメイク体験なさいませんか?」と美容部員に引き留められた。

「私なんかお化粧したって変わらないし、それにこんな高い化粧品買えませんよ」

「お友達の口紅を購入して下さいましたからね。さ、こちらにどうぞ」

私は勧められるまま、案内された椅子に座った。30分ぐらい経っただろうか

「お客様、どうですか?」

「え!これが私!!」そう、プロにフルメイクされた私はいつもと違って自分でも美人と思えた。

「女の人はメイクで変われるんです。お客様は肌もきれいだしこれでも薄めにしているんですよ。この冊子を差し上げますわ。今学生さんなのでしょう?当社の製品をお勤めするようになったらご愛顧いただけたらと思います」

「ありがとうございます」私はそう言うと冊子をもらって帰った。


家に帰り、私は冊子を読み。ネットでメイクについて調べた。確かに人はメイクで変われる。私はいろいろと試してみることにした。


ある日美奈子がやってきて

「ね、このホテルで開かれるパーティ行かない。合コンなんだ」

「え!私でも行けるの?」

「20歳過ぎているから大丈夫。申し込みはね」美奈子がスマホの画面を見せる。

私はその画面を見ながら申し込みをした。

「これで大丈夫。当日はおしゃれしてきてね」美奈子はそう言うと上機嫌で去って行った。

美奈子ったら、又私を引き立て役にするつもりね。当日が楽しみだわ。私はそれからバイトに励み、当日着る服などを買い求めた。


パーティ当日。早めに会場に着き受付をした私はドキドキしながら会場に入った。

わあ!みんなおしゃれだな。と、ちょっと気が引けていると

「ねえ、お名前教えて」と男の人に話しかけられた。

「俺も」「俺も」なぜか数人の男の人に囲まれてしまった。

気後れしながら会話を楽しんでいると、会場に美奈子が入って来た。

「美奈子遅いよ」私は声をかけた。美奈子が近づいてくる。

「え、この人が見栄子みえこさん?」

「違うよ、美奈子。私がおしゃれするきっかけを作ってくれた人だよ」

「デパートで口紅を買わせた人?」

「そう、そのおかげで私メイクに目覚めたんだ」美奈子はわなわなと震えていたが

「なんですって、あなた学校では陰キャラメガネのままだったじゃないの!」

「そりゃそうだよ、学校終わったら毎日のようにバイトに行っていたからね。ブランド物は買えなかったけど、お金が必要だったから」

「え!ブランド物じゃないの?とてもきれいだからブランド物使っているのかと思った!」

「バイトしたってブランド物は買えないよ。メイク用品はプチプラだし、服もアクセサリーも無名のもの。でもそう見えなかったならうれしいな」

「葵のくせに、葵のくせに・・・。この陰キャラが!着飾ったからっていい気になるんじゃないわよ!」

「そうね、でも美奈子こそ私の事引き立て役としか思っていなかったでしょ。私が知らないとでも思ってた。陰で散々ばかにして。でも形勢逆転ね。私の引き立て役になってくれて、私が変わるきっかけを作ってくれてありがとう」

「ね、葵さんこんな人ほっといてあっちで話そうよ」

「そうね、行きましょう」私はそう言うと美奈子を置いて数人の男の人とその場を離れた。


翌日から私はメガネをはずし、軽くメイクして服装も変えた。パーティが終わるまで美奈子には気づかれなくなかったから。

そうすると話しかけてくれる人が出来て大学で友達が増えて行った。


その友達から聞いたのだが、美奈子が私に怒鳴っている映像がSNSに流れ、顔ばれして大変なことになっているらしい。学校からも厳重注意を受けたようだ。後ろ指をさされ、心の醜い人と陰口をたたかれているらしい。ま、私にはもう関係ないけどね。



私はパーティで知り合った男性とお付き合いを始めた。毎日が楽しい。ある日彼に

「メイクする前の葵が見たいな」と言われ昔の陰キャラメガネで会うことになった。

「おかしいでしょ。前は本当に私自信が無くて」

「いや、葵さんは内面が美しいし、今は自信があるからかな?とてもきれいに見えるよ。俺の前では素でいていいからね。俺、葵さんの外見よりも内面に引かれたんだから」

「ありがとう」私は本当に嬉しかった。




4年生になった私は就活に励み、某有名商社に就職が決まった。

私は約束を果たすためメイクを教えてくれたデパートのコスメ売り場に向かった。

私をメイクしてくれた美容部員は大変喜んでくれ、私にオフィスでのメイクを教えてくれた。私は貯めたお金で1式買い込んだ。


さらに数年後、私は彼と結婚し、子供にも恵まれた。



美奈子とは大学卒業以来会っていない。同窓会に出席してみたが美奈子は来なかったし、誰も美奈子の消息を知らなかった。美奈子にはさんざん迷惑かけられたけど。美奈子がいなかったら、今の幸せは無い、今では感謝している。



























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