嘘彼女



「彼女が出来たなんて大嘘。」



「はぁ?でも、先日彼女らしき人と寄り添って歩いてる姿見たけど。」



「彼女じゃない。そもそも、彼女なんて居たことない。」



呆れてなにも言えず、三上をジーッと睨んでいると、観念したのか、少し気まずそうに、口を開いた。



「彼女出来たって嘘つけば、悲しそうな顔するし、玄関の前で遭遇すれば羨ましそうな顔するし、それに…」



「待って。つまり、わざと、そうしてたって事?信じらんない。そのおかげでどんだけあの子が…」



とその先の言葉は、押さえた。

これは、私が言うべきではない。



「事情は、分かりたくないけど、あんたが随分奈々への思いを拗らせてたって事は分かった。分かった上で言っておく。」



「はい。」



「早くその気持ち伝えた方が良いよ。手を遅れになるかもね?」



ニヤっと笑えば、焦った三上は、慌てて非常階段から出ていった。

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