冬はコタツで

ロゼ

第1話

「寒っ! コタツあっためておいてよ」


「了解!」


 初雪が降った日、外から帰ってきた私達はすっかり全身冷えきっていた。


「コーヒーでいい?」


「あったかけりゃ何でも」


「OK!」


 冷えた手を擦り合わせて暖を取りながらヤカンを火にかける。


 お湯が湧くまでの間に二人分のマグカップにインスタントコーヒーの粉を入れ、彼はブラック、私は砂糖多め、ミルクも多めに。


 沸いたお湯をカップに注ぎ、軽くスプーンで混ぜてからコタツへ運んだ。


「はい」


「お、サンキュ」


 彼の向かい側に座りコタツに足を入れると彼の足に触れた。


「冷たっ!」


 先にコタツに入っていた彼の足は適度に温まっている。


 コーヒーに口を付けながら何食わぬ顔をしてコタツの中ではわざと彼の足に自分の足をくっつける。


「冷たっ! やめろよ」


 そう言いながらも彼の表情は満更でもない。


 なぞるように足先を滑らせる。


 太ももまで足先がたどり着いたところで彼の手に捕まってしまった。


「やめろって言ってるじゃん。やめないならこうだ!」


 足の裏が弱いのを知っている彼が擽るように足裏を触ってくる。


「ご、ごめん! やめっ、くすぐったい!」


「あんま暴れんな! コーヒー零れるわ!」


 すぐに手が離されて自由になった私の足。


 大人しくコーヒーを飲んでみるが、一度沸き起こったイタズラ心はそう簡単に消えてくれない。


 温まり始めた足で再び彼の足をなぞる。


 ピクッと反応しながらも黙ってコーヒーを口にしている彼。


 そんな顔をしていられるのはいつまでかしら?


 誘うようにゆっくり太ももを足先でなぞると、チラッとこっちを見てニヤッと笑った彼。


 ヤバい! と思った時には遅かった。


「飲み終わったし、お前も飲み終わってるよな? 覚悟しろよ?」


 しっかりと掴まれた足にこれでもかと擽り攻撃をしてくる彼。


「ごめっ、ごめんっ! ほんとにごめんっ! 無理っ! 無理ぃ! 死ぬ! 死んじゃうから!」


 暴れまくったせいでコタツはぐちゃぐちゃ、マグカップは机から落ちて転がっている。


「割れなくて良かったな」


「……誰のせいよ」


「お前のせいだろ!」


 二人でコタツを直し、今度は彼に後ろから抱きしめられる形で二人でコタツに足を入れる。


 寒い冬は苦手だが、彼とこんなふうにくっついていられるから悪くない。


「やっぱコタツ買って正解だったね」


「日本人なら冬はコタツだよなー」


 背中には彼の温もりが、足はコタツの温もりが。


「幸せ……」


「なに可愛いこと言っちゃってんの?」


 こんな日がずっと続けばいい。

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