第3話 方針会議とダンジョン構想
「さて、現状を整理してみようか。」
豪華な屋敷の広間に全員を集めた私は、シャンデリアの揺れる光を背景に議題を切り出した。外の寒冷地特有の風が窓越しにうなり声を上げる中、広間には冷静な空気が漂っていた。
私の前には、鬼人のセバス、猫の獣人フェン、エルフのリディア、そして息子のリオが並んで座っている。それぞれの視線は真剣そのもの。これから話すことが、この寒冷地での未来を左右するのだから無理もない。
「まず、今の状況を整理する。現状、食料が足りていない――これは重大な問題じゃ。」
フェンが尻尾を揺らしながら声を上げる。
「にゃにゃっ!魔物の肉を狩れば十分にゃ!住民もそれで満足してるにゃ!」
「フェン、それでは持続可能性がないわ。」
すかさず反論するリディア。その冷静な口調にフェンの眉がピクリと動いた。
「魔物の肉だけに依存していれば、いずれ住民の健康が損なわれる。栄養バランスを考えれば、農作物も必要よ。」
「にゃっ!?そんなの理想論にゃ!寒冷地で農作物を育てるなんて無理に決まってるにゃ!現実を見ろにゃ!」
フェンの強い言葉に、リディアの瞳が冷たく輝く。
「理想論ではないわ。確かに苦労は伴うでしょう。でも、その苦労を避けていては未来を築けない。フェン、あなたの考えは短絡的すぎるの。」
「短絡的にゃ!?エルフの理想論ばかりじゃ住民は今すぐ困るにゃ!」
二人の言い争いがヒートアップしていく。フェンの尻尾が怒りで膨らみ、リディアの声も少し硬さを帯びてきた。
「ふむ……セバス、仲裁を頼むぞ。」
私が合図を送ると、セバスが一歩前に進み、落ち着いた声で語りかけた。
「お二人とも、お静かに。奥様の御前で口論するのは無礼です。それぞれの意見には一理ありますが、最終的な決断は奥様が下されるべきでは?」
セバスの声には重みがあった。彼の一言で、フェンとリディアは少しずつ態度を落ち着かせる。広間の空気が和らぎ、私は二人を見つめながら言葉を続けた。
「フェン、リディア。お主らの意見はどちらも妾にとって貴重じゃ。だが、妾が決めるのは、皆が安全に、幸せに暮らせる未来を築くための道じゃ。」
フェンがしょんぼりと耳を垂らしながら呟く。
「……にゃ、わかったにゃ。奥様の言うことに従うにゃ。」
「私も、奥様の判断に異論はありません。」
二人の態度が和らぎ、私は微笑んで続けた。
「よし、それでは具体的にどう行動するかを決めよう。」
候補地の提示
「セバス、移転先の候補地を教えてくれ。」
セバスが胸元のメモを取り出し、三つの候補地について説明を始めた。
•エルシオン王国
肥沃な平原と広大な農地を持つ理想の地。しかし、魔族には警戒心が強く、交渉が難しい。
•ゼクストラ帝国
金属資源が豊富だが、異種族への冷淡さから魔族の訪問には危険が伴う。
•ルナリスの森
リディアの故郷で、精霊の加護を受けた自然豊かな地。ただし、外部との接触を避ける傾向が強い。
「ふむ、どの土地も一長一短じゃのう。」
私は顎に手を当て、深く考え込んだ。
「まずは情報収集が必要じゃ。セバス、魔界の商人や同胞を頼って情報を集めてくれ。」
「かしこまりました、奥様。」
「フェン、住民たちの意見を聞いてきてくれ。彼らの不安を少しでも取り除きたい。」
「にゃっ!任されたにゃ!」
「リディア、ルナリスの森についてさらに詳しく調べてくれ。同胞たちとの接触方法も考える必要があるじゃろう。」
「承知しました。」
議論を終えた後、私はリオを膝の上に乗せ、優しく抱きしめた。
「リオ、妾がこの地を守るのも、移転を考えるのも、すべてはお主の未来のためじゃ。お主が安全に、そして幸せに暮らせるようにするためには、今少し頑張らねばならぬ。」
「ママー、僕も手伝うよ!僕もみんなを守りたい!」
「うむ、その意気じゃ。お主がもっと強くなれば、この先どんな困難も乗り越えられるじゃろう。」
「それからもう一つ。ダンジョンを作るという案じゃが――」
私は広間に魔法陣を展開し、頭に浮かんだ構想を視覚化する。巨大なダンジョンが画面に映し出され、その中には資源が豊富な層や、戦闘訓練に適した魔物の生息地が含まれていた。
「ダンジョンを作れば、住民たちの生活基盤が強化され、魔物との共存も可能になる。」
「ママー、これ僕が強くなるためにもいい場所だね!」
「その通りじゃ、リオ。」
私は立ち上がり、全員を見渡した。
「よいか。妾たちは必ずや、新しい土地で新しい未来を築いてみせる。そのために、皆の力を貸してほしい。」
「「承知しました!」」
それぞれの声が重なり、広間に希望の響きが広がった。私たちは未来に向けて一歩を踏み出したのだ。
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「次回、リオが魔王らしい(?)大活躍!? そしてセリーヌの“母の愛”が炸裂!果たして親子は無事に次の試練を乗り越えられるのか……!?」
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