愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承 四章 日本での休息と修行

@tbwku42263

第1話四章 日本での休息と修行

アフリカの任務が終わり、仕事を他の部隊に引き継いで待ちに待った、しばしの休息である。

季節は12月、日本は冬に差し掛かっていた。

日本に帰ったその日、アリサとの約束通り、ヒロのお気に入りの和食の

店にアリサを連れて来た。ヒロも久しぶりの和食と日本酒が楽しめることを、心待ちにしていた。

二人は銀座に出かけ、その店に向かった。

銀座を歩いていると、アリサが【先生と初デートで銀座なんて、すごく楽しみ】と

喜んでいる。

銀座は多くの人で平日でも賑わっていた、アフリカの貧困な地域とは

別世界で同じ地球で同じ人間とは思えない格差である。

ヒロ達が向かったのは、ヒロのなじみの和食の店、岡と言う店である。

銀座の若手料理人ではピカ一と噂の料理人でヒロの学生時代の友人の史郎(シロウ)の紹介で知って、通い始めた店である。

ヒロが食に五月蝿いのは、もともとシロウの影響でシロウの実家の料亭でバイトを

したり、そのバイト代で食べ歩きや、飲み歩きをして浪費を重ねていたからで、

多くの趣味はシロウと教授の浜の影響を、学生時代に受けたからである。

二人は予約した時間に店に入った、アリサは銀座の和食の料亭など初めてである。

緊張するアリサに【緊張することはない、好きなものを頼んで好きなだけ食べたら

いいんだ】とヒロが言う。

アリサは【こんな高級な店初めてです。何を頼んだら良いか全然判りません】

と言う。

店主の岡がヒロが若い娘を連れていることに、ビックリして

【娘さんがいらっしゃったんですか?】と尋ねた。

ヒロが【似ているかな?なかなか可愛いだろ?】答える。

岡は【こんな可愛いお嬢さんがヒロさんの娘な訳無いですよね】と再度言ってきた。

ヒロがアリサに【ここの主人は料理の腕は良いけど性格が悪いから、気にするな、

お前は俺に似て日本でトップの可愛さを持ってるからな】とアリサに冗談を言う。

アリサは可愛いと言われて上機嫌である。

料理は赤ナマコの酢の物、エゾアワビの刺身、鬼オコゼの刺身、海老芋の煮物、

アサヒガニのゆでた物、ワタリガニのゆでた物、むかごの素揚げなど季節のものを

堪能した。

ヒロは香川県の日本酒、悦凱陣純米吟醸の金毘羅大芝居を飲んだ。

酸味も旨味も兼ね備え食膳食中にも合う銘酒である。

岡が締めに白アマダイのこぶ締めを使い出汁茶漬けを作ってくれた。

至極の時間を久しぶりに二人は過ごした。

二人が家に帰ると妹のユウが家に戻っていた。


今日から二人は姉夫婦と、血の繋がっていない妹(父が親友の娘を養子として

受け入れた妹)のユウと同じ家に暮らすことに成っていた。

姉夫婦は共働きの上医者と科学者でユニオンから高額な収入が与えられている。

二人ともユニオンの理事で役員でもある上、コウジは研究以外趣味もない、

純粋な科学者でユニオンの敷地に大きな屋敷を作った。

年中日本にいる事の無い、ヒロとアリサは日本にいる間、屋敷の中にそれぞれ部屋を

間借りし、住むことにしたのだ。

妹のユウが二人を見て、アリサに【お兄ちゃんとデートしてきたの?】と尋ねる。

アリサが嬉しそうに【銀座の岡って高級な日本料理食べたんです、アサヒガニとか

エゾアワビとか白アマダイとか食べたことない高級料理を沢山ご馳走に成りました】と自慢する。

ユウが【銀座の岡って有名な店じゃない、私連れてって貰ったこと無いんだけど】と

ヒロに言う。

ヒロが【アリサが任務を頑張ったご褒美だよ】と言い訳する。

ユウが【患者さんに頂いたお菓子有るから、アリサちゃん

紅茶入れてくれる?】と言うと。

アリサが【かしこまりー】と返事をする。

ヒロが俺は自分でスコッチを飲むからと、グレンリベット30年をロックで作る。

任務地を離れて久しぶりに家で飲むスコッチは格別である。

ヒロは【この時間のために生きている。スコッチが無ければ俺は死人も同然だ】と

スコッチを味わっている。

ユウは【完全にアル中親父ね、兄ちゃん死んだらアル中の肝臓の見本に

するわ】と言うと。

ヒロが【お前は医者のくせに人間の生理について考察が無さすぎる。

人間はストレスにより、細胞がガン化するか、臓器が細胞分裂を出来なくなり機能

不全で死ぬか、どちらかだ。

俺の場合人生の楽しみを失い気力を失うことは、死を意味するんだ。

適度なアルコールによる肝臓への負荷は肝臓へのストレス耐性を高め進化に繋がる

可能性も有ると言う、新しい学説を俺は証明してやる】と言い返す。

ユウが【そんな学説有るはずないだろ、本当に兄ちゃんは屁理屈王だわ。

アリサちゃんこんな所は絶対に真似しちゃダメだからね】と言い返した。

兄弟のボケ突っ込みに微笑むアリサであった。

日本に帰ってからも、アリサとヒロの修行は続く。

ユニオンがメンバーに求めることは、人間としての進化だ。




メンバーそれぞれが進化することが、ユニオンの進化に繋がり、そこから、新しい道やプロジェクトも生まれてくる。

プロジェクトはあくまでも、方法であり、目的や目標ではないが、ユニオンの目指す目標は果てしなく遠くて、一つ一つ、プロジェクトを組み、に進むしか道は無い。

しかしユニオンは他利でもなければ自利でもない、自利他利公私一如と言う言葉が

有るがそれとも違うかもしれない。

目指す境地は共存である。

それを目指すには、それぞれの進化が必要と考えるのが、マリアの考え方である。

ヒロはアリサに新しい術式を授けるための修行を課した。

アリサの攻撃力は、ヒロのこれまでの厳しい修行により、大きなものを身に着けた。

スピードと威力はかなりのものに成っている。

今回の課題は相手の視覚の影を付き、相手を無力化したポジションから常に有利に

戦う技法である。

中国拳法で言えば、八卦掌の歩法と同じ戦い方である。

日本にも合気など、似た技法、術式は存在する。

八卦掌の套路(型)を繰り返し修行するとともに、今度はヒロを相手に約束組手、

実戦でのスパーリングやマスボクシングを繰り返す。

その他に身体を作るための、筋力トレーニングも欠かさず行わせる。

またヒロは座学でも歴史や自然科学、生理学など教材を作り課題を与え

勉強させた。

ヒロも幼少期から、勉強の課題を姉ヒトミに与えられ、十五歳の時点で

大検の資格を得ていた。

ユニオンのアカデミーに入るには、大検の資格は必須である上、

アカデミーでも語学や、歴史、自然科学の基礎教養の授業は行われる。

卒業してからも、所属する上司から課題が与えられ、

昇級するためには、学んだことをレポートで提出して、その成果を

見せなければ、ならないシステムである。

難しい任務を成功させるためには、知識も常に進化させなければ

達成することは出来ない。

知識と実戦の繰り返しが進化には必要とユニオンは考えている。

約二か月のオフと修行の日々を日本で過ごした後

二人は南米の麻薬やドラックを製造する組織の制圧に参加

することに成った。




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