第5話 配信は世界を救う

     ◆


「はあ、はあ、はあ、やっと終わった……」


 魔王の広間で、骨組みの椅子に座り 魔王エルレイン(佐藤 真猫)は荒く息を吐いた。


「でも、うまくいってよかったにゃ♪」


 ねこにゃんは満面の笑顔で側に立っていた。


「魔王。いや、佐藤 真猫。作戦はうまくいったな」

 

 さきほど 鎖で縛られ連行された勇者が、拘束具なしで魔王の広間に入ってきた。


「ええ、ほんと、疲れたぁ。まさか、魔王とねこにゃんを同時に演じることになるなんて……」


「わたしも、あの時おまえが言った言葉が、真実だとは思わなかったぞ」


 ―――――。


 「そんな話しを、わたしが信じると思うのか?」


 牢獄に囚われていた勇者に、入れ替わった事と、この計画の全容を話した。


「信じられないと言うなら、あたしを殺せばいい」


 牢屋を開けて、腕に巻かれた鎖を解いた。


「あたしを殺して国に戻れば、あなたは歴史上最高の大英雄になれる。そして新たな魔王が生まれ『戦いは永遠に続いていく』」


 異空間から取り出した聖剣を突き立てる。


「あなたの目的が大英雄になることなら、これであたしを殺せばいい」


 佐藤 真猫は無防備に手を広げた。


「………」


 無言で勇者は聖剣を引き抜いて、構える。


「 みんなの笑顔はわたしが守る 」


「――!」


 つぶやいた言葉に、勇者の動きがピタリと止まる。


「どこで……その言葉を……?」


「その言葉が真実なら、その信念に従ってほしい」


 2人はじっと見つめ合い。


「……いいだろう。わたしの誇りと魂に従おう」


 勇者は世界で唯一無二の聖剣を、魔王に手渡した。


 そして3人は考えた。


 すべての者を魅了させる演劇を。



 ――まあ、ネタバレすると、あたしは使い魔の特性を利用し、ねこにゃんの中に入って、魔王と同時に演じ続けた。

 まるで前世でやっていたvtuber活動。


 勇者の協力と、剣劇の練習なしでの成功は不可能だったろう。筋肉痛が凄い。


 勇者メルルは、足を舐めることには最後まで難色を示していたが、ねこにゃんと説得してなんとか了承してもらえた。


 ホント、初日を無事終わらせることができてよかったぁ。


 いじめられて引きこもって、死のうとしたあたしを救ったのは、配信だった。


 配信はすべてを救う。


 あたしがこの世界を変えてみせる。


 配信があたりまえで、戦争なんかより配信見ようぜ。そんな世界にしてみせる。


 そして、がっぽり稼いで この世界で夢を叶えてやるわ。


「わっはっはっはっは!」


 魔王の椅子で高笑う佐藤 真猫に、勇者メルルはあきれた様子で溜息を吐いた。


「本当に、こいつにまかせて大丈夫なのか?」


「にゃ♪」


 こうして魔王と勇者の、世界を革新するコラボ配信が始まった。


 次回の配信まで、おつにゃ〜ん。

 

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お金のためにvtuberやってたら殺されたので、転生して異世界でもやってみた 佐藤ゆう @coco7

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