第8話『償い』

「ニコ、待って! 本当にゴメン! でも、本当にホントに何も覚えて無いんだよ〜!」

ぼくの先をスタスタ歩くニコを追い掛けながら、呼び掛けた。

ニコが振り返る。

ヒィ〜っ!

ニコの顔、見たことないくらい怒っている。

「7万円の鏡割って、な〜んも覚えてないわけ!!」

怖い! ニコ、怖過ぎる!

ニコが向き直って、またスタスタと歩き出した。

あ〜、も〜、ヒールが高いブーツなのに、足が速い。

「ニコ、本当にゴメン! 許してよ〜!!」

ニコがもう1回、振り向いた。

「3日間はわたしに話し掛けないで!」

ニコは怒りながらも、涙目で言った。そして、向き直ってまたまた早足で歩き出した。

「ニコ〜!」

「うるさい! 話し掛けないで!」

ニコは振り向きもせずにスタスタ歩きながら言った。

そして、ブツブツと聞こえる。

「何で、平和にじゃがりこ食べてたわたしが、7万円弁償するわけ! トムのバカ!!」

これ以上呼び掛けても、火に油を注ぐだけ。ぼくが足を止めるとプンプンニコは先に行ってしまった。

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