第7話『木村 聡子』

意識が無くなったトム。

しかし、トムの目に光が戻った。

けど、その光はトムのものでは無かった。

トムの代わりに、

木村 富夢と言う名前のその器に何者かが宿った。

日本最強の霊能者。

トムの血族。


「···仕方無い、孫がこんなんじゃお話にならないね」

鏡に映った亡者が怯えている。

トムの目に驚いている。

トムの発する真言を恐れている。

亡者が恐れおののきながら、言った。

「その金剛軍荼利真言は···

今、木村 富夢の中にいるのは、

木村 聡子(さとこ)か!

おまえ、上に戻ったのじゃなかったのか?」

トムは笑った。

「わたしはひ孫の顔を見るまで、上には戻らんよ。

あんたこそ、下に戻りなさい」

トムは鏡の中の亡者にそう伝え、真言を唱えた。

「オン キリキリ

オン キリキリ···」

鏡の中の亡者が人の形から黒い霧に変わる。それを左右の手の平で丸く球にするように縮めてゆく。

「オン キリキリ

オン キリキリ···」

黒い霧の球を小さく小さく、凝縮させていく。

「オン キリキリ バサラ ウン ハッタ」

トムは黒い球を潰すように手の平を閉じた。

ピキッ。

目の前の鏡にヒビが入り、粉々に砕け散った。

トムは外した御守りを首に掛けた。

木村 聡子はトムの体を離れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る