第2話『初体験』

「ほぇ〜!」

2人で見上げた。

10階建てのビルみたいなラブホテル。

淫靡な雰囲気は微塵も無く、とにかくゴージャスでセンスの良いリゾートホテルみたい。

「スッゴい!」

2人で入り、いそいそと2人で出てきた。

「こんな日も高いのに、何で満室なの?」

あきれ顔のニコ。

「やっぱ、予約とか必要だったのかな」

八の字眉毛のぼく。

2人で3件のラブホを回るが、すべて満室だった。

「なげかわしい! みんなエッチしかすることないわけ!」

ニコはプンプンだ。

ぼくはスマホナビで次のホテルを探した。

徒歩10分。

「も〜、わたし歩くの疲れたよ。

次ダメだったら、トムの部屋でしようよ」

「今日、母さん、パートお休みだから、家にいるよ。ニコんちは?」

「家もダメ! ママいるから、ケーキとか持ってくるよ」

ぼくは魂が抜けるくらい大きなため息をついた。

「次ダメだったら、死ぬほど残念だけど、日を改める?」

ぼくの提案にニコは目を見開いて、反論した。

「ダメ、高校3年生のクリスマスにトムにあげるって、小5のときに決めたんだもん。

それとも、トムはニコちゃんがいらないの?」

「欲しい!!」

「じゃ、ガンバロ」

目当てのラブホに着いた。

白い建物は新しい。明るくて良い雰囲気。2人で顔を見合わせる。こりゃ、きっと満室だな。

ダメ元でホテルに入った。

エントランスを抜け、奥へ。

部屋の写真が並ぶタッチパネルのモニターの前には先客がいた。

大学生くらいのカップル。

モニターはみんな満室。

と思ったら、一つだけ空室があった。

一瞬、やった〜!って、ニコと2人ガッツポーズをしたが、でも、先客がいる。

先客カップルが一言、二言ボソリと話してクルリと帰って行った。

え、ど〜ゆ〜こと?

「あの、良いんですか? 入らなくて」

ニコが帰ろうとする2人に声を掛けた。余計なことを! 変なとこで律儀なんだから!!

すると、優しそうなお兄さんが答えてくれた。

「マットプレーしたかったんだけどね。お風呂の広いマット完備の部屋、空いてないから」

何と、生々しい返答。

ニコと2人で頭を下げた。

「あざます!!!」

去りゆくカップル。

頭を上げると、お姉さんが立ち去り際に振り向いた。

「ファイト♪」

妙に色っぽいお姉さんがウインクした。

「あざます!!!」

再び、2人で頭を下げた。

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