第4話

 空が近い。

 血を吸ったかのように、毒々しく色付く空。染め上げるのは、何者か。私は下を見下ろした。

 大地を這う、真紅の怪物。ペロペロと舐め取るように、木を飲み込み、森を飲み込み、山をも飲み込んだ。

 悲鳴を上げる動物たち、逃げ惑う人々、逃げ遅れた人々、逃げようと思う間も与えられなかった人々。数多の命を糧にしたその巨体は、天を焦がさんとむくむくと背を伸ばす。

 あつい。暑い。いや、熱い。

 脳は熱いと認識しているのに、皮膚は温度を感じていない。そうか、これは夢だ。

 夢の中の私は、不自由で自由だ。

 例えるならば、それはロールプレイングゲームをプレイしているときのように、決められたシナリオの中では私は自由に動くことができる。だが、どう足掻いたところで、その結末を変えることはできない。

 私は鳥の視点から世界を見ている。

 紅く染まる世界。燃える巨体。カメラをズームするように、私はその中心に潜っていく。

 燃える巨体、その中心。そこにあるのは。

 大きな黒い影。

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