第2話 春木センパイ、いちご大福はお好きですか?
【注意】引き続き、健全な料理バトルでお楽しみください。春木くんのキャラが「お前は誰だ」レベルで崩壊している点、予めご了承ください。
ーーー…★
「いい、ハルキくん。餅を捏ねるときには、もち米の形を、素早く崩していくのがポイントよ。でないと・・途中で素材が吹っ飛んじゃうか・・らあ・・そう、そんな感じで捏ねて♪」
とはいえ、力で打ち付けるのではなく。こう、上に持ち上げて・・自然に落とす!
うん、弾力と重量感のある餅だ。二つとも、うまく仕上げないとな。
世界で一番、俺にとって大事な食材だから。
「んっ・・流石よハルキくん。そう・・ここはまだ、粒が残っている箇所だから、上手に寄せてつくのよ。
もう♡ 鏡餅の上の蜜柑、ジュースみたいに、つまみ食いしちゃって。
いいよ、最終ビジョンが見えているなら、好きに調理して・・ね♪」
おや・・脇から・・怨念が・・飛ばされてるぞ?
げえっ、土佐犬!・・のオーラを纏うゆにちゃんだ!
「うう・・哀川センパイの餅、品質無双じゃないですか。
春木センパイ! ゆにの料理も、ちゃんと手伝って下さいよぉ!」
「ふぅふぅ・・あら・・いちご大福の素材じゃない。
おせちメニューではないし、甘いのならおしるこでしょう?」
そうだけど・・この瑞々しい食材の輝き。
食材の声が聞こえる・・美味そうでしょう、美味過ぎちゃってどうしよう・・と。
抗えない・・・ふらふら・・・
「ちょっとハルキくん、夢遊病じゃないんだから!・・もう、バカ。」
「えへへ♪ 春木センパイ信じてました♡
・・って、きゃあっ! ちょ、いきなり苺からは駄目です!
まずは皮と餡を、よく練って欲しいです・・」
ねりねり・・羽根のように、触れるかか触れないかの捏ね方も。
しっかり指で捉えて、やや強めに捏ねる事も。
ボリュームはともかく、手に吸い付く生地から、新鮮さが伝わってくる。
小ぶりの苺も、こうやってコリコリして・・丁寧に熟成させないとな。
市場の苺は「7〜8割熟の、早摘み苺」が、どうしても多くなるから。
「ふぁ・・そーです、そのやり方で、こんてぃにゅーして下さいっ♪
土台が整ったら苺を入れてぇ・・え、えくせれんとぉ! ですうっ♡」
ふう、あとは寝かせて、生地や具材を馴染ませればいいか。
さあて、いよいよメインディッシュの調理準備だな!
二人の顔も、戦いの熱気で紅潮している。 気合い入れて行こう!
「ねぇ・・ハルキくん、しっかり見て。
特製の圧力鍋にたっぷり詰まった、とろみスープ、だよ♡
まずは箸でスープを混ぜたり、圧力すいっちを調整して欲しいわ♪」
「そのお・・ゆにの圧力鍋、小さいですけど、変じゃありませんか?
・・えへへ、良かったです。哀川センパイのとは、品質がちょっと違いますけど、勝手は同じだと思います♪
その、新品なので・・じっくり、丁寧に混ぜて下さい♡」
まずは哀川さんの鍋を、箸二本で調節してみよう。
うん、これは片栗粉がよく機能したスープだ。調味オイルとしても使える、汎用性の高い品質。混ぜる度に、鍋の音声機能が作動しているけど・・気にせず調理続行だ!
「ひぐっ! ちょっとぉ、スープを外にこぼしたら駄目よぉ。
ーーーっ!! そ、それは圧力調整スイッチよ♡ カバーを取ったあと、磨いてから押してよね・・・んっ・・」
なるほど、この圧力なら・・緩急をつけることで、料理の状態に対応できそうだぞ。
これは、名工の器具だろう。透明なスープも、濁ってきていい調子だ。
「ぷくぅー! ハルキ先輩、ゆにも、ゆにの鍋も忘れちゃ嫌ですよぉ。
その・・小さい鍋なので、まずは箸一本でお願いしますっ。
スープの素は入れてあるので、少しずつお湯を加えて下さい♡・・あうぅ。」
鍋の入口、容積、圧力スイッチ・・コンパクトな型の新品鍋だな。
鍋の投入口は・・うん、少しずつ広がる仕様か。
まずは、調理器具をしっかり馴染ませないと、な。
そうしていくうちに、お湯も自動投入されて。
鳴り響く音声機能を無視して、2本の箸で撹拌していく。
こっちのとろみスープは、さらっと食感。でも、秘めたる熱量が詰まった味だ。
試食して・・ずるずる・・追加のお湯を入れて・・
「春木センパイ・・試食・・凄いでしゅう・・!
えへへ、くおりてぃだって、哀川センパイに負けてませんから・・いっぱい飲んで欲しいです♡」
「ハルキ君、こっちも試食してくれなきゃ・・そう、そんな感じよ♡
うどん&蕎麦もそうだけど、音を立ててもマナー違反じゃないから。
貪るように・・お願い♪」
ふう、試食の結果、甲乙つけがたい味だった。
最終調整は・・右手と左手、ダブル鍋でいくぜっ!
「もうっ・・私の鍋だけに集中して欲しいのに・・器用すぎよ♡
具材もスープも準備おっけえだからぁ・・そろそろ、仕上げして欲しいわ・・!」
「えへへ、哀川センパイと互角になれて・・ゆには自信がぁ、ついちゃいますっ♡
こんなに美味しそうなのを見せられたら、うう、我慢出来ないですよお!
お願いします、料理を完成させてくらしゃいぃ・・・この鍋は、春木センパイだけの専用鍋ですから・・・じゃなきゃ、嫌ですからっ・・・!!」
よし、スープは鍋を満たし、床には新たな湖を造成した。
さあ、最終決戦の幕が上がる。これで決めてやる。
俺が一人勝ちして、二人を降伏させるんだ。
「春木くん、伊達巻がすごく太いわ・・鍋に入れたら、最高の料理ができそう♡」
「センパイ、私は・・何が出来るか分からなくて、ちょっと怖いです・・
でも、どんな料理だって受け止めて見せますから・・・
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