第6話 幸せの中で
健斗が「いらっしゃいませ」とカウンターでお辞儀をした。
お客様の美穂が「あぁー、今日はこのお店の店員さんが優しいって聞いて、癒されに来たんだけど、あなたの事だったの?」と健斗に訊ねた。
健斗が「へ?俺の事?まさか、俺はただのアルバイトですよ」と美穂に伝えた。
美穂が「そうよね?でも、あなたがその優しいんだったら、今度私に付き合ってよ」と健斗に声を掛けた。
健斗が「へ?俺が君と?まだ名前も知らないのに付き合うとか考えた事が無かったのに、急に声を掛けて来て、はいとか言えませんよ」と美穂に驚いて居た。
照子が来て「どうしたの?あ、あなた。うちのアルバイトさんに何をしたの?」と美穂に話し掛けた。
美穂が「ゲッ、面倒臭いババアが来たわ。帰ろう」と照子を見てお店を出て行った。
照子が「さっき何て声掛けられたの?」と健斗に訊ねた。
健斗が「でも、あなたがその優しいんだったら、今度私と付き合ってよと言われました」と素直に照子の返事に答えた。
照子が「やっぱりね?若い男性で、健斗君みたいに優しくて、爽やかな青年に声を掛けてナンパしようとする人が多いのよ」と健斗に話を始めた。
健斗が「そうなんですね?俺は何も分からなかったので、照子さんが教えてくれなかったら、今頃あの人と付き合って居たかも知れない」と言う考えが出て来た。
照子が「そうね?そう言う人もたまに居るから、気を付けてね」と健斗に話をした。
健斗が「はい。ありがとうございます」とお辞儀をしてその場を後にした。
アルバイトをして居ると、そこに真純が居て「あなた、何でこんな所に居るの?」と健斗を見て驚いて居た。
健斗が「あぁ、それはね?俺がアルバイトをする前は、どこにも雇って貰えなくて困って居たんだ。でも、照子さんのお店のチラシを見て、従業員になるって決めたんだ」と素直に伝えた。
真純が「そう言う事ね?でも、それにしても照子さんって人が店員さんなの?」と健斗に訊ねた。
健斗が「そうだよ。でも、俺は照子さんの優しい気持ちに触れて従業員になるって決めてからは、もうホームレスの生活を卒業したんだ」と真純に真っ直ぐな気持ちを話し始めた。
照子が「あら?この子、健斗君の彼女?」と思わず聞いた。
健斗が「あ、違うんですよ。ホームレスを俺がして居た時に、いつも携帯を勝手に借りて居たんで知り合いなんですよ」と照子の返事に答えた。
照子が「そう。じゃ、奮発してお花を安くしてあげるから、どんなお花でも頼んで頂戴」と真純に話し掛けた。
真純が「ありがとうございます。じゃ、このお花を2つ貰おうかな?」と照子に頼んだ。
照子が「はい。じゃ、待って居て下さいね」とお花を包装紙に巻いて、真純に渡した。
真純が「うわー、良い匂い。本当に心が安らぐわ」と照子に笑顔を見せた。
照子は「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」と真純に対してお辞儀をした。
健斗が「あの、先ほどは真純に良くしてくれて、ありがとうございました」と照子にお辞儀をすると、照子が「良いのよ?どうせ、そんなにお花を買う人は居ないんだから、こんな時にはサービスしてあげなきゃね」と健斗にウインクをした。
健斗は今、このお店で働けて居ることを心から良かったと思い始めたのだった。
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