第9話

「ん?…携帯からじゃなくて、私の後ろの方から聞こえる」



不審に思い振り返ると、そこにお腹を抱えて笑い転げている人が居た。



「?……まさちゃん、今、何故か私の目の前にお腹抱えて笑ってる人が居る!」



私は取り敢えず右後ろを振りかえった……誰も居ない。


そして、次に左後ろも降りかえってみた……誰も居なかった。


うーむ……



「まさちゃん、この人、何か変なものでも食べちゃったのかも知れないから、保健室に連れていくね?話聞いてくれてありがとう」



私はそう言って携帯をポッケにしまった。


まさちゃんの『あんた、保健室分かるの?』と、いう言葉は、この『何か変なものでも食べてしまったであろうこの人を保健室まで連れて行く』という使命感に燃えていた私には聞こえなかった。



「あのー?」



怖いけど、何か変なものでも食べてしまったかも知らない人をほっとけないし……おずおずと話し掛けてみる。



「どうかしましたか?あのう…?」



今度は頑張ってその人の顔を覗き込んでみた。


え?あれ?


えーと……



「た、高田先輩?」



ビックリした!


でも、知ってる方で少しホッとした。



「あ?おう!あはは、覚えてた?はぁー、おっかしかった」



やっと笑いをおさめると高田先輩は



「お前、すずちゃんだっけ?すげーな」



と、感心した様な笑みを浮かべながら言った。


私は何が何だか分からず



「何が、ですか?私、何かすごい事しました?」



首を傾げながら考える。

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