7. 謁見の間へ
産まれて初めて入った謁見の間は、赤地に金の刺繍が入った柔らかそうな絨毯が敷かれていた。その絨毯は、数段上に置かれた豪奢な椅子二脚に続いている。
「な、何だ貴様は!」
当代では家臣になっているヴァイゼン家の人間が、槍をアイゲンに向けた。
その瞬間。
アイゲンの後に続いていた黒髪赤
「と、止まれ!」
ヴァイース家の面々が、及び腰の状態でアイゲンの前に立ち塞がる。しかし、アイゲンの一睨みで腰を抜かして尻餅をついた。
「そこの者。止まらぬか! 我を誰だと心得る!」
ネリーの父が、玉座から叫ぶ。その隣にいた母が、アイゲンに抱き上げられているネリーを見た。
「ネリー。一体何事なの!?」
母は今日も派手なドレスを着ていた。あのドレスについている末端の宝石の一つ分でも、ネリーに何か与えてくれていたら。
そう考えてしまい、思わず顔をそらした。その、瞬間。
「ひぐっ」
口から泡を吹いて、ネリーの母が倒れた。父は、悲鳴すら上げずに倒れている。両親が死んでしまったかと思い、ネリーは焦ってアイゲンを見た。
「大丈夫。気絶させただけだから」
ネリーを安心させるように微笑むと、アイゲンはネリーを床に下ろした。
そして、振り返る。アイゲンに従う者達が皆、左手を心臓の上に置いた。
「「「はい。心臓は主と共に!」」」
合唱した面々が、それぞれ動き出す。ある者は気絶者を運び、ある者は人間離れの跳躍力でシャンデリアまで飛んで掃除する。またある者達は、数人がかりで内装を変えていく。
ネリーが驚いている間に、黒地に赤い刺繍が入った絨毯に変わっていた。
「さあ、ネリー。一緒に行こう」
アイゲンが出した手に自分の手を重ね、ネリーも数段登る。二脚の豪奢な椅子は、二人がけのソファに変わっていた。
状況が理解できていないまま、ネリーはアイゲンの隣に座る。その姿を見た瞬間、また大合唱された。
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