第15話 地下

アルは歩いていた人を止めて、アイテムの事について尋ねる。

シャーペンとアドは遠くから見ていた。


「どういう対策でしょうかね、アドさん」


「私にもわかりません」





黙り込む人に、しびれを切らしたアルは剣を抜いた!!


「⁉︎…アルさん⁉︎」

「ファ⁉︎⁉︎」



「ハァァァァァァァァァ!」


シャキイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィン



彼女が振った剣は、尋ねられた人の口元を薙ぎ払う。

しかし出血はしていないようだ。さすが剣士、剣の調整がすごい。


人は大きく口で呼吸した。彼にアルは剣を閉まって尋ねる。


「もう一度聞く、テープというアイテムを知っているか?」



「は、はい…知っています」


なんと人はアイテムの事について、〝知っている〟と言った。


「ほう、どういう奴で、どこにいるかも知っているか?」


喋る速度を上げるアル。人は恐る恐る答えた。


「私が知っているのは、テープというアイテムは、街の地下に住んでいるという事だけです。

どのような性格か、どういう力を持っているかは知りません」


「わかった、ありがとう。これは礼とお詫びだ。怖がらせてしまったな、すまない」


彼女は人に金貨を渡すと、シャーペンたちへ駆け寄る。


「テープはこの街の地下にいるらしい。すぐに向かうぞ」



「ちょ待ってくださいよ、さっき剣振ってましたけど、何したんですか⁉︎」


「あぁ、街の住民の口に見えない不思議なテープが貼られているとしたら、そのテープを切ればアイテムの事について話してくれるんじゃないかと思ったんだ。

これが私の考えた対策…テープぶった斬る対策だ」


「怖すぎる」



◇◇◇




「ここが怪しいな」


3人は薄暗い路地を進んだ先にある階段を見つけた。地下へと続いていると思われる。

賑やかな雰囲気が嘘だったかのように静寂感のある場所だ。


見上げると鳥が飛んでいる。街の中心部では鳥は見かけなかったが、ここではピヨピヨと鳴いているのが、よくわかる。


「(人がほとんど来ないから、鳥の住処となっているんだな。こういう所はある意味 都会っぽい)」


シャーペンの頭の中に浮かぶ東京の路地。


「何してるんですか、入りますよシャーペンさん」


「え、あぁすみません」


彼らは階段を下りていった。




薄暗い路地から暗い地下へ。

シャーペンは青く光る石を生成しながら、2人と共に階段を下りた先の廊下を慎重に進む。

茶色いレンガの壁を青白い光が照らした。


正直、森よりもこういう文明の深淵の方が怖い。

そもそもここでは光る石は緊急用の光源としては使えない。魔物には見えない光も人間なら見える。大抵、こういう所にいるのは悪い人間であるからだ。


「特に敵がいる気配はしないな。しかし油断するな?」


アルが目を細めて言う。声が暗い廊下に響き渡った。




ベチャッッ


アドの足が止まる。


「どうした?アド」


「犬のフンでも踏みました?アドさん」


「踏んでないですよ!バカにしないでください!

なんか足がネバネバしたものに、くっついて離れないんですよ」


床には白いネバネバした液体…ノリのようなものが付着していた。


「なんだこれは!」


アルがネバネバしたものに剣を振って切断する。

なんとかアドは足を動かせるようになった。それでも足の裏に気持ち悪さは残る。


「う、なんかネバネバが少し靴にくっついてる気が…」


「それくらい我慢しろ。さすがにそこまでは私の剣でも除去できないというか、危なすぎる」


「俺とネバネバ、どっちが気持ち悪いですか?」


変態なシャーペンは一般人には理解できない質問をアドにした。


彼女はイラつきながら答える。


「その時によります」


「って事は、今はネバネバの方が気持ち悪いですか⁉︎」


「ちょうどネバネバがシャーペンさんに追いついてきたところですよ…まだシャーペンさんの方が気持ち悪いです」


「えぇ…」

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