2章 旅を粘る

第12話 証拠

昼。


森を抜けた後、シャーペンと同じような転生者がいないか、そしてアイテムの事について詳しい者がいないか、探すために都へ行く事にしたらしい。

何か知っている人がいれば、絶対に仲間にしたい。


「シャーペンさんって、元いた世界では何をされていたのですか?」


「平凡な日々というか…学校へ行って帰って、家でゲームして漫画読んで、そのくらいですね。

あーでも、学校のトイレを浸水させた事はあります」


「聞かなければ良かったです」






田舎とは違い、賑やかな街だ。2人は思わずポカンと口を開けた。


ここはセクトラルという地方都市みたいな場所だ。アド曰く地方都市にしては人口が多いとの事。


「すげぇ…白い」


白い壁、白い床、異世界の都って感じがする!

先ほどまで緑緑緑緑緑だった田舎から出てきた2人にとっては、白白白白白って感じの都は刺激が強すぎた……。


緑と白なら緑の方が目に優しいと思うが、でもやっぱり白は刺激的すぎる。


真っ黒なシャーペンと白い都、白い都、白い都…。



(割愛)






「早速、誰かにアイテムの事について知っているか尋ねてみましょうよ」


「そういやそうでした」


アドが道行く人に尋ねる。


「すみません。最近、アイテムと呼ばれている謎の魔法道具を見ませんでしたか?」


彼女に声をかけられた人は、足を止めてそっと彼女を見つめた。


その人の目が素早く細くなったり太くなったりしている。怯えているのか、まるで想定していた脅威に晒されているような。


「(手足が震えている…なんだ、俺たち何かヤバい事聞いちゃったかな?)」


シャーペンの背筋が凍る。

先ほどまで普通に歩いていた人が、アドにアイテムの事について言及された途端、足を止めたのだ。


何か知っている証拠である。


「あの、すみません…アイテムという魔法道具をs」



「悪いが嬢ちゃん、今忙しいんだ…後にしてくれ」


人は早歩きで進み始める。


「ちょ待て!」


シャーペンがついに叫んだ。


「え…………」


恐る恐る振り向く人。彼の視界にシャーペンが入った。


「……………すまん、本当に急用なんだ」


「えちょ…あの、アイテムの事について…」


2人の話を一向に聞かない人に困惑しつつも、今度は別の人に声をかける。




どの人も同じような対応をされてしまった。


最初はアイテムに身内や友人でも殺されてしまったから、話をしたくない的な感じだと思っていたが…どうやら、そうでもないらしい。


「どうしましょうかシャーペンさん、もう日が暮れます」


心配するアド。


ところがシャーペンの脳内は、すでに次の話題に切り替わっていた。


「(今夜はもう遅いし、宿に泊まるしかないよな?

けど俺はシャーペンであって人間ではないから、多分アドと部屋は一緒になる。

つまり…そういう事だ)」


「あの、聞いてます?」


「もちろんですよアドさん。とりあえず今日は調査を終了して、宿へ向かいましょう。

こんなデカい街なら、さすがに宿とかありますから!」



◇◇◇





シャーペンの思った通り、都には宿があって、さらにアドと一緒の部屋となった。


ベッドは一つだけ。何も起きないはずがなく…。


「それじゃあ私は温泉へ行ってきますね。

ついてこないでくださいよ?」


「わかってますよ。少しは信頼してくださいて」


大きな場所だともちろん宿もデカいのだが、温泉付きの宿というのは日本でしか聞いた事が無い。


これは神が、覗き見をしなさい…と言っている事に等しい。


「(こんだけ小さくて黒いシャーペンだ。バレるとは思えねぇ。ついていこう)」

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