第9話 色鉛筆

こうしてシャーペンとアドはアリスの家へ一晩泊まる事になった。


「あ、アリスさんの手料理…⁉︎ゴクリ!!」


「下手だけど許してね…」


「いえいえ、めちゃくちゃ美味しいですよ!」

「はいもう最高です神です」


2人はアリスの作った料理を食べて、絶賛していた。







そして夜、寝る時間に。


「私とアリスさんは この部屋で寝るので、シャーペンさんは向こうの部屋で寝てくださいよ?」


「わかってますよ…いや別に何か考えてる訳じゃないので、心配しないでくださいて」


「それはまぁ、わかってますけど…」

「じゃあ、おやすみなさい」




ベッドに潜るシャーペン。


「(ハァ、どうせなら一緒に寝たかったな〜アリスさんと。

アドさんも良いけどアリスさんを見ちゃったら、もうアリスさん推しになっちゃうな〜。

今からコッソリ2人の部屋へ行こうかな?)」


彼がベッドから出ようとした、その時!!




ギシギシと廊下を何か硬くて大きなものが通る音が聞こえてきた。

その大きなものが、壁にぶつかってカランコロンと金属音を出している。


「(なんだこの音。金属の音か?とゆうか、聞いた事のある音だな…何の音だっけ?)」


ゆっくりとシャーペンはベッドから出て、そっと部屋の扉を開けて、隙間から廊下の様子を見た。


もう大きな何かは部屋の前を通り過ぎたのか、廊下には何もいない。しかし廊下の奥からはギシギシと音が聞こえてくる。

暗くて廊下の奥の方がよく見えない。


「(こういう時こそ光魔法ブルーロックの出番だな。一体あの音の正体はなんなんだ…魔物か?

もしやアリスを!まずい)」


彼は青く光る石を置きながら、そっと音のする廊下の奥へと向かう。シャーペンなので体が軽く、気配を隠しやすい。


やがてリビングへと着いた。大きな何かが近くにいる。


「(油断するな。だいぶ近い。この部屋にいる…!)」


大きな何かからカラコロカラコロと鳴る金属音が、シャーペンに恐怖心を抱かせる。


と思いきや、大きな何かはリビングの奥にある玄関から外へ出た。


「(え、外へ出るのか?何しに来たんだ?)」


窓から覗くシャーペン。

大きな何かの正体がわかった。



















大きな何かの正体は、なんと巨大な色鉛筆のケースであった!!


「い、色鉛筆⁉︎⁉︎⁉︎…(あヤベ、デカい声出しちゃった)」


幸いケースにはシャーペンの声は届いていない。


ケースは自身の体を開けて、色鉛筆を出す。

何をするつもりなのか?


「(もしやアイツが謎のアイテムなんじゃ…!

絶対に許さん。マジで絶対にぶっ○す!)」


カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタと謎の音を出しながら、色鉛筆から煙が立ち込めた。

もっと訳がわからない。


「マジで何がしたいんだよ」


シャーペンがキレた直後、色鉛筆から光が放たれる。


色鉛筆は空を飛んでいた。


「は????」


ミサイルのように空を飛ぶ色鉛筆が、こちらへ迫ってくる!


「ハァァァァァァァァァ⁉︎⁉︎」





ドンガラガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン


色鉛筆が家に墜落し、辺り一面を火の海に変えた。


真っ青な夜が、一瞬にして炎が広がる赤い空気に包まれる。家が崩壊し、瓦礫の山と化した。


「(まずい、アドさん!アリスさん!)」



「シャーペンさぁん!……あ、いた!」


アドとシャーペンが互いに駆け寄る。


「大変です!アリスさんがいません!」


「え、マジすか…⁉︎もしや魔物に連れ去られた⁉︎

そういや、あそこにデカい色鉛筆が!」


シャーペンは家の庭だった方を見た。巨大な色鉛筆のケースも、彼らを見つける。


「おやおや、シャーペンさんとアドさん!」


ゆっくりと、2人へギシギシと音を立てながら近づくケース。

なぜ2人の名前がわかるのか?


そんな事を考えている暇は無い。敵が目の前にいるのだ。


震える体を無理やり抑えて、アドがシャーペンの前に立つ。


「アリスさんを、ハァ、返してください……」



「アリスはもう消した。そんな事より、私と遊ぼう」


ケースは全く動かずに、ハッキリ言った。


「返さないならば、力ずくで返してもらいます…!!」


「そうだ、俺たちがテメェを倒す!」









「アリスとは私の事だよ?」

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