第8話 アルバム

パイを食べ終え、アリスとアドは食器を洗い始めた。


本来であれば彼女らの真ん中に入って、一緒に食器を洗いたいシャーペンだが、この姿では食器を洗う事はできない。

仕方なく、アリスの家を見て回った。


「(不思議な本がいっぱいあるんだな〜。

裕福な家庭だったに違いない。それなのに魔王め…)」


魔王はすでに討伐されているようだ。

ならば謎のアイテムたちを討伐するしかない。

それが、脅威の無い世界が、彼女たちにとって最大の幸せだろう。


アイテムたちへの殺意とアドたちの幸せの願いを胸に、静かに激しく決心したシャーペン。そしてそっと、アリスの自室と思われる部屋の扉を開ける。


「(決して やましい事は考えていない。この世界の文化的なものを調べるためにだ…!)」


彼は部屋に入ると、本棚などの文化を知るのに役立つものが見えた。

しかし彼の目線はすぐに本棚から外れる。


「(服とか無いかな?アリスの服とか…)」


クローゼットを発見した。恐る恐る開いてみると…。


なんと服が何も無かった!


「(え、無い…もしやあの一着だけで生活しているのか⁉︎

よく考えてみればそうだ、魔物たちから逃げてきたんだから、そんな準備をしている暇は無いだろう。それにここは田舎…服屋なんてあるはず無い)」


呆然とするシャーペン。しばらく立ち尽くしていた。







一方その頃、アリスはアドに話していた。


「部屋にアルバムがあるの。見せてあげる」


「へぇ〜楽しみです!」


アリスが今いる部屋へ接近している事に気づくシャーペン。


「(やべ、見つかったら絶対まずい!俺への信頼を失う!)」


すぐさま彼はクローゼットの中へ隠れた。

アリスが部屋の扉を開けて、本棚を漁る。


そして呟いた。


「あれ、まだ描いてる途中だっけ?」


「(何を探してるんだ?そんな事よりアリスさんの描いた絵を見てみたい!)」


「あ、あったあった」


アリスはアルバムを抜き取ると、部屋を出ていく。

シャーペンもクローゼットから出て、彼女の後をつけていく。


「(あの分厚い本はなんだ?アルバムか?

それともこの世界の図鑑…いや、この世界の住民であろうアドに図鑑を見せる必要は無い。

となると、なんなんだ?)」


リビングへ続く扉から2人を覗くシャーペン。

まるで変態ストーカーだ。しかし本の内容が気になる。


「(もしアルバムなら、アリスさんの幼少期の姿が見れる!きっと目の保養になるだろう!)」


深く息を吐きながら、そっと2人が座っているイスの下に、彼は身を潜める。


アリスがアルバムのページを捲った。


「ひゃぁ、アリスさん可愛いです!」


「そう?ありがとう」


「(きっと可愛いんだろうな〜どんな感じかな〜)」


イスの下で妄想するシャーペン。小さすぎてテーブルの上に乗れないようだ。


「(あぁ見たいよ〜)」



◇◇◇



「今日は泊まっていかない?アドさん」


「はい、ぜひ泊まりたいです。シャーペンさんも良いですか?」


「えぇもちろん!」

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