第4話 魔法

師匠が帰ってきた。


「ただいま。どうだ、木は倒せたか?」


見てみると木は倒れている。


「ほぉ」


倒れ具合を見て感心した師匠。


「基礎的な能力は十分備わっているな。よろしい、魔法を教える」


しかしシャーペンとアドの姿が見当たらない。


「アド?シャーペン?どこへ行ったんだ…まさか!」




彼女は勢いよく風呂のドアを開ける。

2人の姿は無い。


ではトイレか?

だが2人はいなかった。


寝室?

どこにもいない。


「2人はどこへ⁉︎」


とうとうアドの自室を開けた!


そこにはイスに座ってシャーペンを掴んでいる彼女アドが!

机に置かれた紙にサラサラと文章を書いているではないか。


「アド!どうした⁉︎」


「あ、師匠おかえりなさい。このペン、すごく書きやすいんですよ。これでストレス無く手紙が書けます!」


アドは誰かに向けての手紙を書いているらしい。

シャーペンは、それを聞き逃さなかった。


「手紙…?え、誰に向けてですか?」


「文通をしている友人にです。最近この近くに引っ越してきたみたいですが、まだ会った事はありません」


「へ、へぇ…そ、それ、本当に友人ですか?」


「はい、つい最近出会ったばかりですが、すごく良い人なんですよ」


「へ、へぇ〜良い人なんですね〜そりゃ良かったですよ…。

し、幸せならOKですからね〜そりゃもちろん」




「と、とにかくシャーペン、一体どのように木を倒したんだ?」


師匠は困惑した顔で聞く。


「木を猛スピードで突きまくって、無理やり倒しました」


どうやらシャーペンはペン先で木を連続かつ高速で突いて、押し倒したようだ。

だいぶ物理的…というか強引である。


「なるほど、しかし木を押し倒したのは事実だ。

では約束通り、魔法を教えようと思う」


「ありがとうございます!」




◇◇◇




「では、まずは初心者でも扱いやすい光魔法から教える」


家の庭に出たシャーペンと師匠の2人。


「光魔法は魔力の消費を抑えられ、かつ発動速度も速い。さらに場所のよっては上級者用の魔法にも劣らない威力を誇る魔法だ。

下級の魔物なら一撃で倒せる上に、もし仮に倒せなかったとしても魔力を消し去る効果がある。

中級以上には攻撃としては使えないが目潰しには有効で、辺りが暗ければ暗いほど威力は高くなる」


「へぇ、すげぇ強いんですね」


「そうだ。光魔法と防御魔法さえあれば1人でも戦闘ができる。

あ、でも君は確かアドと共に旅に出たいのか」


「はい」


「ならアドは攻撃系の魔法が得意だから、君は防御やトリッキーな魔法が良いかな」


「例えば?」


「そうだな、誘導魔法とかどうだろう?

この魔法は魔物を指定した地点に誘導する事ができる魔法だ。極力 戦闘を避けたい時に使用するのが主な使い方」


「なるほど…」


「まぁ君は君自身の能力が十分強いし、戦闘用の魔法は考えなくて良いだろう。

光魔法を応用したこの魔法を君に教えよう」


師匠は掌から青い光を放つ石を生み出した。

この石がポロポロと複数、掌からこぼれ落ちる。


「な、なんですか、この光る石は…」


「この石は魔物には認識できない光を放つ光魔法ブルーロック。緊急用の光源として使用できる」


「つ、強いんですか…」



「弱い魔法を応用できるか、できないかで、その魔法使いの能力が決まるんだよ」

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