第3話 土地神様と災い

合格……私が?

「え? ちょっと待ってくださいよ」


ニコニコでグッドポーズしてる菊花さん。

「愛望さ〜ん! 合格したようですね!

 私も合格しましたよ」


私は愛想笑いをしながら手を振った。


「これ、落ちる人いるんですか?」


「昨年は三人に一人が落ちました」


試験管の人がこちらを向いた。

「全員が相応ふさわしいとは限らないので

 こちらも何人かは落とします。僕は貴方を見込  

 んで合格にしました。期待していますよ」


愛望はうつむいた。

「期待しても、どうせ上手くいかないですよ」


合格したのでカードを貰えました。


三雫さんが言うには、

「合格者は十人一組として働いてもらいます。

 まずは、菊花さん、コロネさん、私と貴方で計

 四人です。

 あと六名は後程加わっていくでしょう」


「本当に働くんだ。あんまり辛くないといいな」

ほんの少しの違和感が残る。


あれ? コロネさんって猫じゃん。

どうやって働くんだろう。


愛望が考え事をしていると菊花とコロネが来た。

「お待たせしました。行きましょうか」 


私達はこれからここに住むことになりました。

旅館に住むってどんな感じなのかなとは気になっていたので、ちょっと楽しみな自分がいます。


私は菊花さん達と階段を上り、上に向かった。

「なんか雲の上でワイワイしてるイメージだった  

 から想像してた世界と違う……」


「想像はほとんど当たらないものですよ。

 きっと、これから想像つかないような事も沢山 

 あると思います」


「確かに、死んだ後も働くとは思っていませんで 

 した。もう何があっても驚かない気がします」



「うわぁぁっ!?」

私の声が娑婆しゃば中に響いた。


菊花さんの後ろに隠れた私を見つめるのは、コロネさんだ。



 コロネ (3ヶ月)



コロネは尻尾をピンと立てた。

「なにがあっても驚かないってさっき言ったじゃ

 ん!」


私は菊花さんを見た。

「なんで急に話せちゃうんですか!?」


菊花さんは穏やかに言った。

「この子は私の神使しんしなんです。

 なので話せます」


「うっ……」


バシっ!!


私がもう一度叫ぼうとした時、後ろから口を抑えられた。見ると三雫さんだった。

「騒ぎなさんな。一度中に入りましょう」


中に入ると、そこはかなり広い所だった。

15畳ほどの部屋が2つありふすまで遮られている。

見ると、窓もなく、その2部屋以外無かった。


「ゴンっ! ゴンっ!」

あと、金魚がいるんだけど。

泳いでるっていうか、ぶつかってるんだけど。


「こちらに」

私達は三雫さんに言われ座った。

「少し説明不足でしたね。

 まずは、コロネさんについて話します。

 コロネさんは生前菊花さんのサポートをされて

 いました」


「サポート……?」


コロネは愛望を見つめた。

「きっかはね、神様なの。神様の仕事を支えるの  

 がコロネの仕事だったの」


私は瞬時に菊花さんを見た。

「神様……だったんですか?」


「菊花さんは、土地神様でした。

 土地の者達から愛され、土地の者達を愛されて

 いました。とても素晴らしいお方でした」 


菊花さんは浮かない顔をしていた。

「でも、私は力を失ってしまった……」


「え……?」


コロネ尻尾を巻き、耳を伏せた。

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