第2話 没後労役検定

「三雫さん、ご無沙汰しております」


後ろを振り返ると白い着物を着た美人な人がいた。あと足元には黒猫の子猫がこじんまりと座っていた。


三雫は微笑んだ。

「どうも、菊花きっかさん」



 ✕ ✕  菊花きっか (?)



菊花さんという人は穏やかで上品そうだ。

「あら? そちらの可愛いお嬢さんは?」


愛望はビクっとした。

「あっ、愛望といいます」


菊花は愛望と目を合わせニコッとした。

「私は菊花です。この子はコロネといいます。 

 愛望さんも試験を受けられるのですか?」


私は三雫さんに目線をやった。

「試験……?」


三雫は言った。

「ここで働く者は皆試験を受け資格を取らなけれ

 ばいけません。資格を取った者達はグループと

 なり、仲間となる。そして現世に行き災いを無

 くすのです!」


菊花さんは私の両手を取り握った。

「一緒に受けませんか?」


私は戸惑いながら答えた。 

「いえ、その……私はまだ決められてなくて」


三雫さんは片方の私の手を取り握った。

「一緒に働きませんか?」


二人の視線が怖い。

あと、さっきから息ピッタリ。

「一緒に働きましょ?」


私は負けた。

コロネさんだっけ?

めっちゃ見てくるんですけど。

3対1は勝てない……。


「分かりました」


三雫と菊花は目を合わせ、ハイタッチした。

「よっしゃっ!」


三雫は愛望の方を見て言った。

「ちなみに、資格を取った後3年は働いてもらいますので」


私は仏スマイルで言った。

「それ早く言ってくださいよ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 


 気など乗る訳も無く試験を受ける事になった。

会議室と書いてある部屋に連れて行かれた私と菊花さん。ざっと見て10人ほどしかいない。

「もっといると思ってた」


三雫さんが後ろから話しかけて来た。

「今人手不足なんです。頑張ってくださいね」


試験管らしき人が入って来た。

「ではこれから没後労役検定ぼつごろうえきけんていを始めます。

 皆様席にお着きください」


席にはペンと紙が既に置かれていた。


「では始め!」


どれほど難しいのだろうか。



第一問、人間とは何ですか。

第二問、愛と命どちらが重要ですか。

第三問、夕飯何がいいと思いますか。



三問しかないし、答えの無い問題じゃないの。

二問目までは結構良い問題だと思う。

でも最後の問題なに?


遠くの菊花さんを見るとスラスラとペンを動かしている。


なんで書けるの……?


「止め!」 

試験管の合図と共に皆がペンを置いた。


「ではこれから採点を行います。

 責任者は採点を行ってください」


私の責任者は三雫さんだった。

「それでは採点を始めます。

 えっと……一問目の解答は、人間とは現世に生  

 きる者たちですね。正解です。

 二問目は、どちらを答えても正解になるので丸

 ですね」


えっ……なんで出題したんだろう。


「最後は、米粉パンですか。

 これは何故ですか?」


愛望は気まずそうに答えた。

「ご飯派かパン派か分からないので、中間の米粉

 パンを書きました」


三雫さんは口に手を当て、謎に感激していた。


通りかかった試験管の人が隣に来た。

「素晴らしい……! 貴方はです」


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