プロローグ③
俺には明日の朝がある。そう信じきっていた。むしろ無い訳が無いとも思っていた。だが朝目覚めた時には、まるで体が浮いていて、一切の自由は効かず、どこを見ても真っ白な夢のような場所にいた。
またそこには俺以外にもう一人いた。
「ようこそ天界へ! 私は何者かと言うと……ま、適当に神で良いだろう。一体何故自分がここにいるのか? どうして自分なのかとか。色々疑問があるだろう。
説明すると長くなるので割愛してェ。簡単に言えば神のお遊びってやつだ」
馬鹿な。あり得ない。俺はもう天にさえも抗う力を身に付けたんだ。俺が死ぬことなど世界が滅亡して存在ごと抹消される方法以外に無い。あまりにも下らん。遊びなぞ尚更だ。今すぐ現界に戻して欲しい。
神を自称するそれは、俺に向かって人差し指を立てて否定した。
「ノンノンノン。お前が天に抗うことが出来るのはその世界の天のみだ。まさか天が世界に一つしか無いなんて思ってないだろうな? まぁ、それはどうでも良いとして。お前には私の遊びに付き合ってもらう。拒否権はない。
ルールはとても簡単。これからお前は一つの、雑魚中のクソ底辺雑魚の魂に憑依してもらう。その体に乗り移るって訳だからお前も超弱くなるけれど……一応人間だから安心しろ?」
つまりコイツは別世界。又は別次元の神だから俺の力の対象外ということか。ならば仕方が無いな。往生際悪く、無い力を望むことはしない。
さて、ルールと言ったか。神の遊びなのだからゲーム感覚のようだが、どうせそんな軽い物では無いんだろう。これから始まることがどんな物でも受け入れてやる。しかし一つだけ質問がある。
俺は死んだのか?
「あーそれについても安心しろ。お前の魂を切り離した時点で、お前がいた世界の時間も完全に止まっている。まぁ、いつになるか知らんけど、戻れたら世界はまた動き出すから。
どんな物でも受け入れるか。それは話が早くて助かるねェ! じゃあもう一つ。これはお前がこれから憑依する身体。つまり本人の人格の崩壊を防止するための物。名付けて『魂の抑制』という力が働くことがある。
これについても説明するとクソ長くなるから割愛する。ま自分で調べろ! 多分お前ならすぐに理解できる!」
それで、俺はその身体で何をすれば良いんだ? 終わらない遊びという訳では無かろう?
「え、何をする……? スゥーッ……いっけねー! 何も考えてなかったわ! そうだな……あー。うんうん。あ! 時間無いからそろそろお前を飛ばすわ! とりあえず自由にやってくれ! それじゃ!」
は……? おいふざけるな。目標がなくてはいつ元に戻れるかも分からん。自由こそ終わらないゲームでは無いか! おいッ! 待っ─────
神がここまで無計画で良い物なのか。俺は自由の効かない体とはっきりとする意識の中で何度も問いかけるが、だんだんと視界は霞んでいき、最後の言葉を言う前に完全に暗転した。
それから体感で約5秒後、勢いよく瞼を開く。映り込む景色は見知らぬ天井。どこかの屋内のようだが、ゆっくりと目を左右上下と回して周囲を見ても、そこそこ上品な調度品が置かれた一つの部屋だった。
《僕はその中の最低中の最低……》
どうやら俺はその部屋のベッドで寝ていたようで、ゆっくりと身体を起こす。
両手から両腕見つめ、自身の状況を確認する。部屋の中には姿鏡もあったので自分の姿を確認する。
《やる気が無いとかじゃなくて、出来ないんだ》
服装は決して高価とはいえないものの、そこまで貧乏らしさはなく、ただ下級の平民よりマシな格好をしている。
顔立ちは……かなり幼く見えた。王であった自分の姿もそこまで老けてはいなかったが、今この目で見ている自分は恐らく成人もしていない。推察するに、大体一五〜六歳くらいだろうか。
《一体僕は何故生まれてきたんだろう……》
「これが新しい体か。にしてもだ……」
さっきから半ば気にしないようにしていたが、頭の中から聞こえる声はなんだ? 聞くからに。
「どこまでも地に落ちた。憐れな青年だな……」
《え……? は? えぇ!? 誰だお前ッ!? あぁぁ……あああああ!! ついに幻聴まで聞こえるようになったのか!!》
まさか本人の人格が残っていたとは言わないだろうな。てっきり憑依して身体も乗り移るから残っていないと勝手に思っていたが、これは少々。いやかなり面倒なことになりそうだな……。
元世界最強国王は最弱平民に転生させられ元の人格も生きたままだけど、せっかくなのでコイツを王にします Leiren Storathijs @LeirenStorathijs
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