愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承2章アカデミー編、新しい継承のスタート

不自由な新自由主義の反乱児

2章アカデミー編、新しい継承のスタート

いよいよアカデミーでの教師生活がスタートし、ヒロが四十歳の春?四月である。

ヒロが教師を引き受けるその条件は少数精鋭、人数は十五人まで、その多くはヒロの知っている第一次の戦いで戦死したりしたヒロの仲間の武術の里の出身の子供たち

だった。

その中にアリサと言う十五歳の少女がいた。

彼女の父はヒロの戦友で駿翔(ハヤト)と言う、彼も戦いの中で負傷してそれが原因で後に無くなった。

彼の一族は優れた目を持ち、スピードを持ち味とした戦う技術を持つ一族だが、逆にそのスピードが災いして守りの意識を欠いて大きなケガを負った。

アリサも父親譲りのスピードを持ち、才能に溢れている少女だったが、ヒロには 

それが逆に心配であった。

十五人すべてが才能を持ち基礎的な修行を終えて習得していたが、ヒロが重んじた

事は誰一人死なせない、とにかく守り切る意識と技術だ。

修行で多少の怪我をしても死ぬことは無い、昔と違い守られた中での修行だ。

しかし、実戦となると話は違う。ほんの少しの油断が命に関わってくる。

武の本質とは矛を止めること、誰一人死なせない事こそ、武の本質である。

修行の基本は101理論である、常に前回より高みを目指し厳しいことを課して

心技体を高める。

常に前回よりも、高い負荷を修行で与えることが、成長と進化の基本である。

勿論、回復にあてる休息やリカバー、そして戦術的ピリオダイズレーション理論で

ピーク期や負荷の種類を変化させ、成長を効率的に促すこと、メンタルの成長と休息のバランスも考え個々の能力に応じたプログラムをヒロは考える必要がある。

ヒロは子供たちに接する中、子供たちが育って行くことに喜びと生きがいを感じて

いった。

素質も将来性も有る子供たちを誰一人として戦いで死なせたくない、彼らの多くは

素質も有るがその道を選んだというより、里や家の影響でその道に進んだ子供も多い。

自分と重なり、自分が子供のころ、祖父や多くの武術の師匠、水樹、チャオ、 

マリア、ロンたちの思いが少し解ったきがした。

当然修行は厳しくなるが、子供たちが可愛いが故である。

そんな中アリサは才能を伸ばし、見る見る力を付けてくる。

またヒロが自分の父親と親友だったことを知ってか、父親になつく子供のようにヒロを慕ってくる。

ヒロはそんなアリサが可愛くて仕方がないが他の生徒と同じく接する必要がある。

しかしアリサの素質は伸ばしてやりたい、アリサには他の子供以上に厳しく修行を

課していく。


彼女の長所はスピードと優れた目、しかしそのスピードから大きな威力の攻撃を出すための土台の力が足りない。

それを併せ持つことが出来れば鬼に金棒である。

以前に、直接打撃の空手でそのスピードから天才と言われた空手家が

いた。

しかし小柄でスピードに固執したため、大型のパワーファイターに度々

苦い思いをしていたが、彼は中国武術の練法や近代パワートレーニング

を取り入れ身体を作り世界を制した。

それに加え、ヒロはアリサに流水の足さばきを教え込んだ。

これにより、離れた距離から、近い間合い、全ての間合いで戦える技術を

教えて行ったのだ。

アリサに厳しい修行を課すなかで、ヒロに取って特別な生徒に成って行く。

他の生徒もヒロの修行でどんどん力を付けて行った。

その中でヒロと関係の深い生徒が千鶴(チヅル)である。

チヅルの母親は雪(ユキ)と言いヒロの十歳以上年上の女性武術家でチヅルを

産んで数か月でこの世を去った。

原因は病だったがそれも多くの戦いで無理をしたためであると思われた。

彼女もヒロの戦友でヒロが憧れた女性であった。

武術だけでなく幻術、式神、毒や麻薬、あらゆる技術を使いこなし、

強さと美しさで白い妖狐といわれるエージェントであった。

チヅルも母親に似て美しい少女だ。

まだその能力は開花してないが、聡明な知力そして家伝の体術武器術

を身に着け光るものを感じた。

ヒロはアリサとチヅルを競わせることで、両者の力を伸ばそうと考えた。

アリサはどんどん力を付け生徒の中で、体術ではトップの実力を付けた。

アカデミーが始まり、そろそろ十カ月ほど過ぎていて、一年たてば十五人を

見習いとして色んな部隊の任務に出さなければならない。

勿論最初は、危険の少ない任務で上級の経験の豊富なエージェントの下でのスタートするが、それでも修行と実戦は天地の差が有る。

この二か月は五人や三人でチームを組んで、実践的な戦いの訓練で想定戦を行う。

アリサのチームとチヅルのチームは、両チームとも順当に勝ちを拾い、全勝のまま

トップ争いでぶつかる事となった。

アリサのチームは主にアリサ一人の力で、チヅルのチームはチームの総合力とチヅルの頭脳により、勝ちを拾っていった。

ヒロはこの戦いをアリサに勝たせたくは無かった。

アリサの父と同じ運命を負わせたく無かったからである。

アリサは自分の力に自信があり自力に頼りすぎる、他のメンバーの動きに目が

行かないのが弱点である。

チヅルもそこには気付いているが具体的な作戦は思いつかない、そこで、

こっそりチヅルに作戦を与える。

それはアリサにチヅル一人に集中させ他のメンバーを使いアリサ以外のメンバーを

先に無力化して最後に総がかりでアリサに攻撃を浴びせる作戦である。

そのために、まずはアリサを言葉で心理的に揺さぶりチヅルを

意識させることだった。

チヅルは戦いの前、アリサに【ヒロ先生がアリサより私を戦士として

買ってくれている、私は卒業後先生と一緒のチームで実戦に出ることは決まっている、まあ今度の戦いでそれを証明してあげるけどね】と言った。

そしてヒロはそれ見よがしに、チヅルに近づきチヅルの母ユキの話をして

親しくみせた。

それにより。アリサは力を示そうと先走り、戦いのリズムを失い無理な攻撃を

チヅルばかりに集めて体力を無駄に使った。

その間にチヅルが立てた作戦で他のメンバーを無力化して孤立したアリサにチヅルのチームが総がかり、そしてアリサは自滅してしまうのだった。

チヅルに負けて泣き崩れるアリサ。

自分で与えた試練にヒロもアリサが可哀そうに成るが、そこは師匠としてアリサを

指導しないといけない。

アリサにリーダーとしてチームを守ることを忘れたことを叱り、自分の強さへの

奢りやエゴが先に立って仲間を危険に晒したことをしかった。

逆にチヅルはチームの力を引き出し勝利に繋げたことをほめた。

しかしチヅルには解っていた、アリサを伸ばすため自分を勝たせたこと。

チヅルは逆にアリサの素質やヒロの愛情が羨ましかった。

チヅルはヒロに【私、母様以上のエージェントに成って見せますから】と

ヒロに言う。

ヒロは【アリサだけを強くしたいわけではない、チヅルはユキ姉と同じ知恵と

力をどんどん付けて行っている。二人はきっと良いライバルで良い仲間になるから、

二人で切磋琢磨して、時には助けあって成長して欲しい】と言う。

チヅルは【解っています、今度母様の色んな話をもっと聞かせてください】と言い。

ヒロは【お前の母様は本当に綺麗で、俺には優しくてしかも強くて皆の憧れだった、

チヅルが産まれた時、俺もユキ姉様に会いに行って、お前を抱っこしたんだ。

まだチヅルは本当に小さなおサルさんみたいで、ビックリしたけど、今のチヅルは

ユキ姉とそっくりで、逆に動揺したよ】と言った。


チヅルが【じゃあ、先生を誘惑しちゃおうかな?母様のこと好きだったんでしょ?】と聞くと。

ヒロは焦って【ユキ姉には憧れたけど、お前に手を出したら、あの世からユキ姉が呪術を俺に掛けてくるからな、だがチヅルと一緒に戦ったらユキ姉が居るみたいで心強い

早くユキ姉様以上のエージェントに成長してくれ】と言う。

チヅルと話した後、ヒロは、アリサに会いに行き、落ち込んでいるアリサに

あることを告げる。

アカデミーを卒業したあとも、内弟子として現場で一緒に仕事しながらアリサを

指導する事だ。

【お前はまだまだ未熟だが、父親から受け継いだ素質は大きい、だから父親以上になり、ハヤトも願った平和で皆が共存できる世の中にするため戦う義務がある、

アリサの父様の分までアリサを強くする義務が俺にもある、このことは卒業まで、

皆には言わず、一緒に修行する、まだまだ厳しい修行を課すから覚悟するように】

と言った。

次の日からもヒロの厳しい修行は続いた、多くの先人から引き継いだ技術や術式を

生徒たちに惜しげもなく教えた。

武術の技や力は教えたからと言って、みんなに身に付くと言うものでもないがホントに、教えたかったのは、やはり武の本質、大切なものを守ること。

そしてなんのために武を身に着け使うかを、それぞれがいつか、自分の答えを

見つけて欲しいと説いた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承2章アカデミー編、新しい継承のスタート 不自由な新自由主義の反乱児 @tbwku42263

作家にギフトを贈る

カクヨムサポーターズパスポートに登録すると、作家にギフトを贈れるようになります。

ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?

ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ