第2-2話 これって転生ですか?
零路が意識を取り戻したとき、最初に感じたのは、全身を包む重たくひんやりとした感触だった。
視界はぼんやりと緑色に染まり、身体全体が奇妙な違和感に包まれている。まるで深い眠りの中から引き戻されるような感覚の中、零路はようやく自分の状況を理解した。
俺はどこかに閉じ込められている。
ロッカーのように狭い空間。
おそらく、緑の液体に浸されている。
そして、裸だ。
顔には何かが装着されており、それが呼吸を助けているらしい。
空間には丸い窓があり、その向こうには見たことのない無機質な部屋の景色が広がっていた。
見覚えのない異様な構造――少なくとも自分が知る限りでは、どこの文化にも属さない場所だ。
中央には、以前見かけたあの少女の姿があった。彼女は青白く光る球体のようなものを凝視している。
俺は窮屈な空間の壁を力任せに叩いた。
「……ッ!」
少女がこちらに気づき、慌てて駆け寄ってくる。
視界から彼女が一瞬だけ消えると、ピーッという音ともに中の液体が排出され始めた。
液体が完全に排出されると、マスクが外され、扉が音を立てて開く。
「目が覚めたんだね、よかったぁ!」
少女は安堵の表情を浮かべると、零路に微笑みかけた。
「ここは……どこだ?」
少しずつ冴えていく頭で、俺は少女に問いかける。
しかし、少女の表情が一変する。
頬を赤らめた彼女は動揺しながら視線を逸らすと、小さな声で言った。
「そ、それより……服、持ってくるから……!!」
――そうだ、俺は裸だった!
思わず前を隠そうとするが、身体が思うように動かない。
バランスを崩した俺は、そのまま少女の方に倒れ込む。
「ひゃあっ!」
驚いた少女が声を上げる。
気付けば、少女の顔が目の前に迫り、あと少しでも近づけば触れてしまいそうな距離だった。
互いの息遣いさえ感じられるほどの距離で、時間が止まったかのように見つめ合う。
少女の顔はみるみるうちに赤くなり、零路もまた、同じように顔を真っ赤に染めていた。
「ご、ごめん!こんなつもりじゃ!」
俺は慌てて声を上げるも、やはり身体は上手く動かせない。
「だ、大丈夫!だから、早く……どいて……!」
少女の声は震え、頬はますます赤みを帯びていく。
彼女は視線を逸らしながらも、手を伸ばして俺を支えようとしてくれる。
だが――再び身体のバランスを崩した俺は、無様にも彼女の胸に顔を埋めてしまった。
「――ッ!」
少女の小さな悲鳴と、驚きで硬直した俺の心拍が同時に跳ね上がる。
「本当にごめん!」
俺は慌てて顔を離し、なんとか謝罪を繰り返す。
「き……きにしてないからっ!早く横に行って!!」
彼女は赤く染まった顔を俯けながら、か細く震えた声で言った。
俺は彼女の言葉に従って身体を横に転がる。
どうにか状況を打開したようで、彼女はホッとした様子で小さく息を吐いた。
「そこで待ってて……!今、服を持ってくるから……!!」
彼女は耳まで真っ赤に染めながら慌てた足音を立て、部屋から飛び出していった。
俺は今起きたことが信じられず、天井を見つめて呆然とする。
胸の鼓動がやけにうるさかった。
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