第2-1話 これって転生ですか?

 王国歴2000年、冬。

 深い暗闇と静寂に包まれた山の上の公園。

 広場のベンチに腰掛け、空見零路そらみれいじは空を見上げていた。

 氷の刃のような風が頬を刺し、吐く息は白く染まりながら空に溶けていく。

 足元は薄く雪が積もり、粉雪が静かに零路の足跡を覆い隠していく。


「綺麗な雪だなぁ……。故郷が懐かしい」


 零路はぽつりと呟いた。

 ノーストピアの冬は厳しく、今頃猛吹雪に違いない。

 ミッドランドの冬は彼にとってどこか懐かしい温もりを与えていた。



 *



 今日は魔法学園の入学試験を受けた帰りだった。

 緊張と疲れが重なり、心が休息を求めるままに立ち寄ったミティア国立公園。

 この静かな雪景色が、零路にとって憩いの場所となっていた。

 身体はもうすっかり冷え切ってしまっていたので、そろそろ帰ろうかと立ち上がる、その時だった。

 空を裂くような音が段々と大きくなり、自身の真上から聞こえてくる。


「何だ?」


 音の方向を見上げると、空高くから光を放つ何かが、一直線にこちらへ向かって落下してくるのが見えた。


「嘘だろ……!」


 反射的に避けようとするも、かじかんだ身体と雪が足を奪い、零路は地面に倒れ込んだ。

 次の瞬間、轟音と共に激しい衝撃波が広場を駆け抜ける。

 雪が舞い上がり、零路の身体も巻き込まれて吹き飛ばされる。

 背後の木に全身を激しく叩きつけられ、彼は意識が揺らぐのを感じた。

 視界がぼやける中、自分のいた場所に大きな金属の球体がめり込んでいるのをただ見つめる。

 表面は滑らかで、今まで見たことのないデザインだ。


「大砲の弾か……?」


 その球体が静かに開くと、そこから一人の人影が立ち上がった。

 ぼんやりとした意識の中で、零路は懸命に声を絞り出そうとする。


「助けてくれ……!」


 しかし、その声は弱々しく、ほとんど言葉にならなかった。

 幸運にも、その人影は零路に気づいたようだった。

 彼に向かって駆け寄り、焦った様子で声をかける。


「聞こえる?ねぇ、聞こえる!?」


 零路はかすかに目を細め、その人影を見つめた。

 街灯に照らされた鮮やかなピンク色の髪と、柔らかい角のような真っ白なヘア・アクセサリーを付けた少女。

 少女はエヴォルピアでは見慣れない深々とした白いパーカーを身に着けていた。


「なんで人間が!?しっかりして!大丈夫?」


 身体を動かそうとするも、言うことを聞かない。


「待ってて、私が今助けるから!!」


 視界は徐々に暗くなり、俺の意識はそこで途絶えた。

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