第1節 〜 vs 各務原北高校 後半パート2
遥と誠が交代で入った後も、カクキタは変わらずロングボールを多用した攻め方を続けてきた。そのロングボールをセンターバックである恭平が頭でしっかりとはね返す。そのこぼれ球を誠が回収しようとすると、カクキタイレブンは相も変わらず激しくプレスをかけてきた。
「う、うわっ――っと」
激しいプレスに誠は前を向くことを諦め、センターバックである康太へバックパスで戻す。そして、カクキタのプレス先が誠から康太になったところで、誠は少しポジションを移動させ、またしても康太からリターンパスを受け取る。
するとまたしても誠にプレスが来たところで、今度は斜め後ろにいた吉井へバックパスを送る。このように、最終ラインからパスを受けては別の最終ラインの選手にバックパスで返すという行為を誠は繰り返していた。
「――前線!フォロー!!!」
最終ライン付近からなかなか前に進められないため、康太が斉藤や悠里といった前線の選手らにパスを受けに来るよう指示を出す。
「――ちっ」
「はいはーいっと――まこっちゃん、こっち!」
康太の指示に従い、斉藤と悠里は誠からパスをもらうために自軍側へ戻ってきたのだった。
◇
(――チャンスだ)
カクキタの最終ラインを守る選手たちは、
(ここで一気にラインを上げて、高い位置でボールを奪えれば――)
そう考えたディフェンスリーダーは最終ラインを少しずつ上げて、ハーフウェーラインほどまで来たところで、近くをふらふらと
(……交代で入った――なんでこんなところに……まぁ、いい――今はこのチャンスを活かす)
そして彼がボールホルダーである
◇
(――これを待ってた)
誠はカクキタの最終ラインがかなり高い位置まで上がってきていることを見てそう思った。誠の狙いは単純で、相手の点を取りたい欲を逆手に取り攻めあがってきた状況で大きく空いた裏のスペースを狙うというものだった。
事前に練習していたわけでも、チームメイトに話していたわけでもないため上手くいくかはわからなかったが、遥が誠の意図をきちんとくみ取り、カクキタの最終ライン付近を漂っていてくれていた。
そして、もう何度目かわからないが恭平からパスを受けると、カクキタイレブンがここぞとばかりにプレスをかけてくる。
誠はターンすることもせずトラップでボールを浮かせると、パスの供給先を見ることなく大きくカクキタの最終ラインの裏に生じたスペースへ蹴りこんだ。
そのパスに反応したのは遥だった。オフサイドにならないよう、カクキタの最終ライン付近を歩いていた状態から一気に加速し、カクキタの最終ラインの選手を置き去りにする。
ゴールキーパーが飛び出してくるも、圧倒的に遥の方が早くボールに到達したためあっさりとダブルタッチで躱し、無人のゴールへボールを蹴りこんだ。後半35分、ダメ押しの3点目となったのだった。
◇
カクキタの反撃はここまでだった。3失点目以降、これまで通りハイプレスを続けたい前線の選手と、高いラインをとりたくないディフェンダー陣の思いがぶつかり、かなり間延びしたフォーメーションとなってしまった。
間延びしたことで、中央にスペースが生じる。そこを遥が見逃さずに利用する。
「――ボール!」
「――ほらよ」
長谷川から足元でボールを受け、相手の寄せが甘いことを見るや否や即座にターンして前を向く。遅れて寄せてきた相手をボディフェイントだけで躱すと、手を挙げていた悠里にパスを出し、遥も斜めに動く。
パスを受けた悠里はダイレクトで斉藤にパスを出し、斉藤は完ぺきなポストプレーでディフェンダーを背負ったまま、走りこんできた遥にボールを落とす。そのボールに合わせて左足で、ダイレクトでシュートを放つとゴール右上にきれいな軌道で突き刺さった。カクキタの戦意を喪失させるには十分すぎる4点目となった。
それから間もなくして、試合終了のホイッスルが響き渡った。大垣高校のG1リーグ初戦は快勝という結果に終わり、幸先の良いスタートとなったのだった。
◇
G1リーグ 第1節 第3試合 試合結果
大垣高校 vs 各務原北高校
前半:2-0
後半:2-0
合計:4-0
得点者 ※()内はアシスト
32分:甲斐 (長谷川)【大垣高校】
45分:斉藤 (吉井)【大垣高校】
80分:七海 (杉浦)【大垣高校】
88分:七海 (斉藤)【大垣高校】
◇
その他試合結果
帝嶺大学付属可児高校 vs 本巣商業高校:8-0
岐阜FC vs 東美濃太田総合高校:4-1
長良西高校 vs 中京中央高校:1-1
笠松工業高校 vs 恵那農林高校:5-1
◇
現時点での順位
1位:帝嶺可児
2位:笠松工
2位:大垣
4位:岐阜FC
5位:中京中央
5位:長良西
7位:東美濃太田
8位:恵那農林
9位:各務原北
10位:本巣商
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