第4話(著:玄瀬れい)
「じゃあね! かなちゃん!」
「うん! 朱里ちゃんのクッキー今度食べさせてね~!」
かなちゃんに手を振って帰途につく。
クッキー食べたいって言ってくれた!!
ぜったい食べてもらえるようにならなくちゃ!!
そういえば、クッキーを試作してから二週間が経ったけど、いつ並べてくれるのかな?
お姉ちゃんにあの後、いつから出せるか聞いたら、「もう少し待ってね」と言われた。
色々と大変なんだと思ってワクワクドキドキしながら待ってたけど、私のためにこっそりと、型を準備してくれてたときに比べて、少し段取りが悪い気がする。
あとでお姉ちゃんに聞いてみようかな。
しばらく歩いて、お姉ちゃんの働く工房の前に差し掛かった。
灯りがついてる。
遅くまでかなちゃんとお勉強してて、もうこんな時間になってるのに。
って! あれお姉ちゃんだ! こんな時間に何してるんだろう?
『おう、まだいたのかい……?』
声をかけようと思ったけど、知らない人が出てきて思わず隠れてしまった。
『はい……少し練習したくて……』
練習……お姉ちゃんも頑張ってるんだ……
『何? 例の新作かい? 熱心なのは良いことだが気を付けてくれよ』
……新作? そっかお店の新作が出るから、私のは待っててってことだったんだ。
『……』
『鍵、預けても良いかい? ちゃんと戸締まりだけしておくれ』
ウィーーン。謎がわかって帰ろうと思ったとき、後ろで扉が開いて、お姉ちゃんと話してた店長さんらしき人が出てきた。
いよいよお姉ちゃんだけになり、またもやお店に入ろうか迷い始めた。でも、忙しないお姉ちゃんの必死な背中を見て、先に帰ることに決めた。
家に着くと、私はベットの上に寝転んだ。
……かっこよかったな、お姉ちゃん。制服姿のお姉ちゃんは本当に職人で、無音が聞こえるようだった。
それに私、探してたものを見つけたかもしれない。なんでお姉ちゃんのクッキーと私のは雰囲気が違うんだろうって思ってた。けど、原材料から違った。当たり前だけど、お店のと小麦粉もバターも違う。だから、あれだけ練習してるお姉ちゃんの知らない驚かすものが出来たんだ。
それならお店のとおうちので成分とかがどう違うのか、お店に出せるようになるまでに調べとく必要があるよね。明日にでも見に行こうかな?
翌朝、私は土曜日だというのに、いつも以上に慌ただしいお姉ちゃんの物音に朝早くから起こされた。二度寝しようにも寝付けず、ちょっと早いけど十時には買い物に出発した。
お姉ちゃんのお店の前を通ると、見慣れない看板が出ていて、新作のクッキーを売り出したと書かれていた。気になって近付いた私は看板のクッキーに思わず顔をしかめていた。
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