第2話 センパイの気遣い
「
「はい! それは“耳タコ”ですけど……私も暇つぶしで猫の手をしているだけです」
「そんな若い身空で暇つぶしだなんて!! それに奏愛ちゃんのお家は私よりずっと遠いでしょ?」
「いえいえ 愛車のスーパーカブならあっという間です。あ、でもごめんなさい。私、バスの定期代いただいているんですよね」
「それは全然構わないのよ……いくらスーパーカブだってガソリン代はかかるし維持費だって……」
「それだってトータルしても年間7万くらいで済んでるんですから……ただで乗せてもらってるようなもんです」
「だけどねえ~ 奏愛ちゃんにも給与計算事務やってもらっているからお分かりだと思うけど……うちの会社はそんなにお給料良くないのに……」
確かに……私は特別にスキルがある訳ではないからこんなもんだろうけど……“マルチタスク”の春乃さんには不相応に安いと思う。
聞くところによると春乃さんは今野課長と“同期”で……この会社にお勤めしてもう10年になるそうだ。
今は5歳の娘さんがいらっしゃる元イケメン?の課長が……こっそり教えてくれた。
「きっと今は上手にしまい込んでいるんだろうけど……入社した当初の春乃さんにはどう抑えてもこぼれ出て来る色香があって……俺も結構アプローチしたんだけど相手にしてもらえなかったなあ」って
でもこぼれる色香があったって本当かな?
今、事務所の応接スペースを占拠して二人でお弁当を食べているのだけど、ウィンナーとしめじで作ったドングリの帽子の部分(爪楊枝)をつまんでパクン!とついばんだ春乃さんの表情は可愛くはあるけれど……
「ん? 気が付かなくてごめんなさい。おすそ分け……」と私のお弁当に“ドングリ”とウサギリンゴをのせて下さる。
私は……
『春乃さん! そうじゃないんです!! 可愛くて見とれていました。おかずじゃなくあなたを』とは言えるはずもなく……おすそ分けに感激してみせた。
こんな春乃さんに対しての
「春乃さんはプライベートをどうお過ごしになってるのかしら?? できればお休みの日の春乃さんにお会いしたいなあ……」
という願いがついに叶う時が来た!
私の入社1周年のお祝いに……春乃さんがご自分のアパートに私を招待してくれたのだ。
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