パズルのピースがあなた。
吉野 真衣
パズルのピースがあなた。
同級生の彼らは卒業旅行で人生最悪の失敗をしてしまった。仲良しだったメンバーの一人が行方不明になってしまったのだ。繁華街の高級ホテルは人で溢れている。人里離れた旅館でふらふらとどこかへ……という感じではなかったのだ。
メンバーの一人が口癖のように言う。
「――もう戻らないだろうね」
最初で最後の言葉はなんとも意味深だった。彼女がどうして消えたのか不思議であり不気味でもあった。だからこうして今年も同じメンバーと同じ目的地へ旅行に来ていた。まだそこに居るのではないかと疑ってしまうのだ。繁華街はちらちらと眩い上に不器用に区画整理されているせいで時折眩暈がした。だったらどうしろと? 幼馴染の彼は窓の外が暗がりではないのに苛立ちながら呟いた。
「お人形さんね」
「そうだね」
そんな言葉が出てきた。自然と。
「ああお人形さんか」
「そうだった、ああそうだった」
私たちのメンバーが集団幻想だったことに今気が付いた。
彼らが思っていた行方不明のメンバーは足りない分を補ってくれるその時その時の誰かの面影を思い起こす。モンタージュ写真を作ればこの世に存在しない人物だろう――。
パズルのピースがあなた。 吉野 真衣 @yoshinomai1202
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