前世旅物語〜全ての恋の遺憾が消えるように〜

雪方ハヤ

“前世旅計画”

 ほとんどの人が思う“過去”とは、すでに終わっているもの。俺もそのうちの一人だ。

 しかし、ある日俺は奇妙な少女と出会った。



「つかれたーー!!!」


 今日は金曜日の午後、高校一年の俺の一番のお楽しみは放課後、思いっきりベッドにダイビングして、寝転がることだ。


 いざベッドの前に立ち、俺はほっと息を吐いた。


 ポンっと俺はジャンプし、目の前にある厚みのある布団に向かって突き刺さった。ぶぁ! っと音ができた。


「気持ちいぃ〜……」


「……」


「……っ?」


「なんかふわふわじゃね」


 すると、俺は厚い布団の中をめくった。


「はじめまして、恋月こいづき様」


「誰ぇぇぇ!!??」


 布団の中には十代後半あたりの少女がいた、俺はびっくりして、その少女を地面に蹴り飛ばしてしまった。


「お……お前!! 不法侵入だぞ! ……あ、いや!俺は未成年にこそ手を出す男だぞ!!」



「痛いですよ……恋月様」


 恋月菜乃葉、俺の名前だ、こんな女の子っぽい名前の由来は親が本当だったら娘につけたかった名前らしく、男の子は欲しくなかったらしい。でもこの名前のせいで、なにか友達に疎遠されることはなかった。


「さま?」


「あまりにも寒かったので、恋月様の布団にお邪魔してました」


「いや勝手に入るなよ」


 すると、少女はなにごともなかったように、地面から立ち上がった。


「私は今日から恋月様のメイドとして、あなたの“旅”のサポートをする人です」


「……は?」


 彼女をよく見たらとても清楚っぽいが、顔に余分の表情はない、身長は百七十ある俺より頭一個分小さい、髪は現実に相応しくないシルバー色に、髪型はは眉毛を隠した姫カット、そしてメイド喫茶でしか見えないメイド服を着ている。


前世旅計画ぜんせたびけいかく……とでも呼びましょうか」


「ゼンセ……タビ……なんて?」


「前世旅計画です。人間というのは“前世”というものがあります。それを旅していくのです」



 意味がわからない、俺はファンタジー小説は好きではない、神や前世論も信じていない、もっとも、なんで俺は自分の前世に旅する必要はあるんだ? など、色々こいつに疑問がある。


「一回お前の話を信じよう、まずお前の名前、そして何する人だ? それを先に教えろ」


 彼女は少し自分の脳内で言葉を構成し、またまた無表情で言った。

「私は名前がありません、恋月様が好きなように呼んでください、私は前世管理人です」


 こいつの声……機械よりも感情がないな、それより、前世管理人って? っと俺は心で思った。


「もし“前世”の遺憾がえげつないほど過去の鉄序を乱した場合、本人にタイムリープさせていただきます」


「過去の鉄序……が乱れる?」


「今はもう時間がありません、“そこ”についてから話しましょう」


 すると、少女は肉眼で捉えられないスピードで俺を抱きしめ、俺はだんだんと眠くなった。


 そして、俺は無数の自分の前世を体験する“旅”に出た。

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