第5話・女湯の激闘!女怪人『カメレオンカッパ』登場〔後編〕【朱乱 ジンを熱美が強引に裸体ヒーローに】
◆◆◆◆◆◆
阪名 華奈はお風呂セットを持って、近所のスーパー銭湯に向かっていた。
華奈の後ろからは、肩にタオルを引っ掛けたタマタマンと。
黄色のプラスチックの風呂オケに、バスタオルと石けんケースを入れた裸の熱美がいた。
金色に輝くタマタマンが言った。
「楽しみだなぁ、地球の銭湯は初めてだ」
華奈は、タマタマンの股間にぶら下がって、揺れている二つの塊をチラチラ見ながら言った。
「あのぅ、それ目のやり場に困るので、引っ込めてくれませんか」
「どうしてだ? これはエネルギーの塊だぞ……金色のタ……」
「とにかく、気になってしかたがないんです! 引っ込めてください!」
「わかった、わかった……ふんむっ」
二つの金色のタマは、タマタマンの体の中に引っ込んだ。
「これでいいか、元々巨大ヒーローは爬虫類系で、性器は体の中に収納されているからな」
「初耳です、巨大ヒーローって爬虫類だったんですか? あっ、言われてみれば爬虫類顔のようにも」
◇◇◇◇◇◇
華奈は、今度はチラッと裸で歩いている熱美の方を見る。
熱美は、自分の姿は他人には見えていないと言うが。
すれ違う通行人の視線は、どうも熱美に注がれているように華奈には思えて仕方がなかった。
熱美が鼻歌混じりに言った。
「うちの田舎には銭湯なんて無いから、都会のスーパー銭湯は楽しみ」
華奈が訝しそうな口調で、熱美に訊ねる。
「その手に持っている黄色いプラスチックのオケも、他の人には見えていないんですよね」
「当たり前じゃない……あたしの本体は、別の所にあるんだから」
スーパー銭湯に近づくと、銭湯の入口からお風呂セットのカゴを提げた双子の姉妹が出てきて、華奈に向かって一礼をして言った。
「石油コンビナートの時は、どうも……よくも折り曲げてくれましたね」
「そして、海溝に沈めてくれちゃって」
仰天する阪名 華奈。
「あ、あ、あ、あなたたち⁉ 油獣双子怪獣の!」
「オイルスキーです……結構、折り曲げられた時、痛かったんですからね」
恨みに満ちた目で、華奈を見る双子姉妹。
動揺しながらも華奈が質問する。
「ど、どうして、ここに?」
双子の姉が答える。
「あたしたち、元々『原初母体AI女王怪獣クィーン・マザードン』から。AI怪獣細胞を分け与えられて、怪獣乙女になっていたんです」
続いて双子の妹が答える。
「倒されて怪獣エネルギーが、減少したから人間体に……また、怪獣エネルギーが蓄積されたら、怪獣化します……たぶん、それではその時にまた」
そう言い残して、不敵な笑みを浮かべた、双子怪獣姉妹は去って行った。
去り際に双子は小声で。
「お姉ちゃん、あの人……どう見ても裸じゃない?」
「そうよね、露出狂の痴女かしら? 黄色い風呂オケ持って」
その言葉を聞いた華奈が、慌てて熱美に指摘する。
「やっぱり、見えていますよ! 先輩!」
「ウソぅぅぅ! あたし見えていたの! きゃあぁぁぁ!」
悲鳴を発した熱美は、裸で空へと飛び去った。
◇◇◇◇◇◇
華奈は、銭湯の脱衣場で脱衣をして裸になった……タマタマンの。
「どうせ、オレの姿は見えていないんだから……華奈と一緒に女湯でも」
の、言葉を全面否定して、タマタマンを男湯の方に追いやって。
湯船に浸かった華奈は安堵の息を漏らす。
「ふうぅ、やっぱりお風呂は最高」
お湯から出て、再度の体洗いをしていた華奈は、お尻をヌルッとした感触で触られた気がした。
(気のせい……かな?)
華奈の隣で風呂イスに座って体を洗っていた、若い女性が突然。
「ひッ⁉」と、声をあげて背筋を伸ばす。
女性の乳房が、指の間に膜が張られた手の跡に変形して凹むのを華奈は見た。
同時に女性の肩の辺りから、見えない女性の声が聞こえてきた。
「ねーちゃん、エロい体をしてんなぁ……どや、ここが気持ちええんか……ほれほれ、気持ち良かったら声出しぃ……カッパぁぁぁ、おっ、あっちのねーちゃんもええなぁ」
女湯で、次々と女性の悲鳴が響き渡る。
「きゃあぁぁ?」
「なに? ヌメッとした手で体触られた?」
「女湯に、ナニかいる?」
女湯から外に裸で逃げ出す、女性入浴客たち。
風呂イスから立ち上がった華奈は、脇の下を片手で押さえて、単体ライダーヒロインヒーロー『サカナ カナ』へと変身する。
「カナァァァァァァ!」
赤いマフラー、裸身に変身ライダーベルト、手袋とブーツ。
ついでに体に防具的な模様が浮かぶ。
「裸じゃありません! こういう模様なんです!」
サカナ カナの隠れたモノを見つけるカナアイが。
銭湯の天井に張り付いていた、カメレオンカッパを発見する。
「そこだぁぁぁ! エロカッパ!」
華奈が投げた風呂オケが、カメレオンカッパの頭の皿に命中して、皿を割られたカメレオンカッパは。
「キュゥゥゥ」と断末の声を発して、銭湯の床に落下してきた。
モザイク処置されたカメレオンカッパの頭部から、見てはいけない腸のような臓器が流れ出している。
カメレオンカッパの体は、白い泡に包まれて消滅した。
変身したまま、華奈が呟く。
「勝った……でも、虚しい勝利だった」
◇◇◇◇◇◇
女性入浴客が全裸で銭湯の外に飛び出して来たところを、円盤に乗ったニャゴ博士が選択して網で女性たちを捕獲していた。
「素材が大漁ニャ、これでまた怪人や怪獣が作れるニャ」
そう言って、円盤に乗ったニャゴ博士は飛び去って行った。
◆◆◆◆◆◆
三日後──学校で授業を受けていた、華奈のアホ毛が怪獣と怪人の同時出現を知らせて立った。
学校近くの造成地から、数日前に発掘された古代生物の卵と、怪獣と古代人を液体化して別々の青と赤のカプセルに閉じ込めたモノに晴天の雷が落ちて。
古代ムチ竜逆さ怪獣乙女と、なんでも溶かす泡を口から出す青い怪獣乙女と、半裸の体に赤い包帯を巻いた古代エジプトの女王のような女性が現れた。
タマタマンの声が華奈の頭の中に聞こえる。
《華奈、変身だ! 古代怪獣と古代怪人を倒せ、裸で戦えサカナ カナ》
虚脱して机に顔を横に伏せた華奈が、スマホの怪獣&怪人検索アプリを見ながら言った。
「イヤです……怪獣二体と得体のしれない怪人一体を相手する気は無いです」
スマホのアプリ画面には。
《『古代ムチ竜逆さ怪獣乙女【トライテール】』……古代海洋怪獣乙女、その肉の味はエビに似て美味……基本は腕で腰を支えた『肩立ち
《古代青色溶解液怪獣乙女【アホラス】……超古代人がカプセルに封印した怪獣乙女……強力な溶解の泡を口から出して、女性の衣服のみを溶かす──一緒に別のカプセルに封印された、赤い包帯を巻いた古代女王が大嫌い》
《古代女王怪人【パトラ】──世界征服の野望を持っていたので超古代人の手によって赤いカプセルに封印される、赤い包帯を半裸に巻いている。パトラには
横伏せでスマホ画面を眺めながら、華奈が呟く。
「へぇ~古代女王怪人のパトラのパートナー怪獣の
まったく、やる気が出ない華奈にタマタマンが怒鳴る。
《どうしちまったんだ? 華奈、やる気出せ……よく見たら華奈の顔に怠け者ウィルスのソバカスが! どこだぁぁ、この教室にナマケモノウィルスを撒き散らしている怪獣乙女がいる!》
そうこうしている間に、二体の怪獣乙女と一体の怪人女王が激突する。
ムチを持った赤いパトラが、地面にムチを打ちつけて青いアホラスに命令する。
「アホ怪獣、この街を恐怖の街に変えておやり、怪獣総進撃のはじまりだ!」
赤い女王が大嫌いなアホラスが、パトラに向かって白い溶解泡を吐きつける。
「うるせぇ! あたしに命令するな! クソ女王! 骨まで溶けて消えろ!」
泡に包まれて、赤い包帯を巻いた女王は溶けて消えた。
アホラスが口の周囲に付着した泡を、手の甲で拭う。
「ふぅ、腹に溜まっていた毒の溶解泡を出したらスッキリした」
アホラスに肩立ち倒立したトライテールが、親しみを込めた口調で言った。
「すごいですねぇ、同じ時代に生息していたら……どんな怪獣乙女も、溶かされちゃうんじゃないですか?」
「そんなコトはしないよ、溶解泡は自分を溶かす危険もある、両刃の剣だから」
「じゃあ、この街を泡だらけにして……女性の衣服を溶かしちゃいましょう、あたしが邪魔な建物を三本のムチで破壊しますから」
「おっ、それいいな……不細工な臭い中年男は、骨まで溶かしてやるよ……若いイケメン男は捕まえて、着せ替え人形の服を脱がすように男の服を……ぐふふふっ」
アホラスは変態怪獣乙女だった。
その時──野次馬していた、華奈の学校の女性教諭の姿が憑依されて、肉野 熱美の姿に変わる。
「ニクゥゥゥゥゥゥ!」
裸体巨大ヒロインヒーロー『ニクノ アツミ』が出現した。
熱美は足元にいた、朱乱 ジンをつかむと、顔の近くに持ち上げて言った。
「怪獣乙女二体を、あたし一人で相手をするのは大変だから……あなたも協力しなさい」
熱美はどこからか取り出した、巨大なシェイカーの中に未成年の朱乱 ジンを押し込んで、シャカシャカと上下に揺する。
アルコールが入ったシェイカーの中で、シェイクされる朱乱 ジン。
「あたしに酒を飲まされたら、未成年から成人に年齢成長するから法的には
意味不明なコトを言って、空中にシェイカーを放り投げる熱美。
「シェイカーが落下して地面に激突する前に、巨大ヒーローに変身しろ!」
シェイカーの中から、ジンの叫び声が聞こえてきた。
「サケェェェェェァ!」
裸体巨大ヒーロー『シュラン ジン』が爆誕した。
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