第4話・女湯の激闘!女怪人『カメレオンカッパ』登場〔前編〕【怪獣乙女と女怪人の秘密】

 ヒトデが横に連なったような油獣怪獣を倒して、華奈が家に帰ると自分の部屋の中に、タマタマンと裸の『肉野 熱美』がいた。


 大型ペットボトルの炭酸飲料を飲んでいる熱美が言った。

「お疲れさま……先に言っておくけれど、ここにいるあたしは本物じゃないからね……魂とか精神体みたいな存在だから、本体は地方にいるから」


 華奈は冷蔵庫の中に入っていたはずの、大型ペットボトル飲料を飲んでいる裸女を、訝しそうに眺めた。

「あたしのコトを『後輩』って呼んでいましたよね……説明してください」

「そこから? タマタマン……華奈に説明してなかったの?」


 スマホゲームをしながら、タマタマンが言った。

「いろいろと、忙しくてな」

「しょうがないなぁ」

 裸で片足胡座あぐらをかいた、熱美が自分の股間を指差して裸の華奈に質問する。

「どう、あたしのココ見える?」

「いいえ、偶然にヌイグルミが遮蔽物になっていて見えません」

「コレが裸体ヒロインヒーローの特徴なの……見えそうで見えない、胸の方はどう?」

「見えません……透過光のスジが偶然に、乳首を隠していて」

「よろしい、華奈の方も何かしらで見えていないから……あらためて自己紹介するわね、あたしの名前は『肉野 熱美にくの あつみ』地方に住む会社員」


「地方の方が、なぜここに?」

「よくぞ聞いてくれました……華奈は疑問に思ったコトはない、怪獣や怪人が出没するのが、なぜか首都近くの地域で地方には出没しないのかって」

「言われてみれば変ですよね?」


「実は地方にも怪獣や怪人は出没しているのよね……全国ニュースにならないだけで」

「えッ? 怪獣とか怪人って地方にもいるんですか?」


 熱美の話しでは、地方に現れた怪獣や怪人は、主に〇衛部隊や警〇官が対応して、追っ払っていて。

 怪獣は〇衛部隊では、払い下げになった中古の光学兵器車両が攻撃して。

 怪人は、〇官が発砲して追い払っているらしい……ムクドリを追い払う要領で。


「そりゃあ、六大政令指定都市みたいな大都市なら、〇〇防衛軍みたいな組織の支部があって、迅速な対応ができるわよ……でも、地方だとなかなかね。だから、あたしみたいな地方の巨大ヒロインヒーローが、各地に出向いて怪獣退治をしているワケ……変身する素体は現地調達で」

 

「地方の怪人と戦っているのは、〇察官だけですか?」

「いいところに気づいたわね……地方にいる〝御当地ヒーロー〟が怪人と戦っている、そのために彼らは地方ヒーローになったんだから」


   ◇◇◇◇◇◇


 その時、階段の下から母親の声で「華奈、なにか大きな荷物が届いたわよ」の声が聞こえ、華奈はパンツを穿いた。

 タマタマンが顔を上げて呟く。

「やっと、届いたか……華奈の乗り物が」


 炭酸飲料を飲んでいた熱美が、立ち上がって言った。

「ちょっと、トイレ借りるわね……飲みすぎてオシッコしたくなった大丈夫この家の中で、あたしの姿が見えているのは華奈だけだから……たぶん」

 全裸のまま部屋を出て、階段を降りていく熱美の姿を階段の下で呆然と見ている、祖父の姿があった。

 華奈が玄関から外に出ると、ブラック・サンタレディが立っていて。

 近くに新品の電動自転車があった。

 内臓が詰まった布袋を担いだ、ブラック・サンタレディがタブレットを差し出して言った。

「別の並列世界パラレルワールドからのお届け物です……ここにサインを」

 華奈がタブレットにサインを書くと、ブラック・サンタレディは華奈の乳首辺りをしきりに凝視して呟いた。

「見えない……虫が飛んでいて邪魔して見えない」


 ブラック・サンタレディが去って。華奈が届けられた新品の電動自転車を見ていると、いきなり電動自転車が華奈の声でしゃべった。

「よっ、おまえがこの世界のサカナ カナか……軟弱そうなサカナ カナだな」

「自転車がしゃべった?」

「しゃべったら、悪いか……オレは、別の並列世界パラレルワールドに存在する、サカナ カナ……〝マシンカナ〟とでも呼んでくれ、おまえの足になるためにタマタマンに呼ばれてやって来た」

「マシンって……電動自転車ですけれど」

「細かいコトは気にすらな……どうだ、高速道路をひとっ走りしてみるか……オレに乗りな」


 華奈は自分の部屋に戻ると着衣した、その時なぜかタマタマンが「白衣コートは着ていけ……まだ、その下着と白衣コートだけしか処置が進んでないから」そう言った。


 着衣して玄関に出た華奈を見て、マシンカナが言った。

「普通の繊維の服か……ムダなコトを、いいからオレに乗りな」

 華奈が電動自転車のマシンカナに乗ると、両手と両足のスニーカーがライダー手袋と、ライダーブーツに変わる。

「さあ、オレをこげ! 地獄の果てまでぶっ飛ばすぞ」

 華奈がペダルを一回こぐと、マシンカナはいきなり時速百キロ越えに加速した。

「ひえぇぇぇぇぇぇ!」

「よっしゃ! 今日も絶好調! ついでだから、このまま等身ヒロインヒーローに変身しちまえ! 両手離しでも倒れねえから安心しな」


 華奈は巨大変身した時と同じポーズで、片方の脇の下を手で押さえて叫ぶ。

「カナァァァァァァ!」

 疾走する華奈の腰に変身ベルトが巻きつき、光りの風の中で華奈の姿は、サイクルヘルメット・赤いマフラー・白衣コート・ライダー手袋とライダーブーツだけの変態痴女姿へと変わった。

 股間には千切れたパンツの布が、引っかかっている。

 高速道路を電動自転車で走る、ライダーヒロインヒーロー『サカナ カナ』は裸体に風を感じながら叫んだ。

「裸じゃありません! こういう模様なんですぅぅぅ!」


  ◆◆◆◆◆◆


 その頃、秘密すぎる結社ネオ・ノットルンに、ニャゴ博士が訪れていた。

「怪人製作は、どんな具合かニャ」

「どうも、思ったようは進まなくて」

「どんなところが?」

「合体怪人を作ろうとしているんですが……失敗続きで」


「ニャ? どんな合体怪人を作りたいんニャ?」

「今までに挑戦したのはコブラとマングースの合体怪人で〝コブグース〟」

「それは、最悪の共食い組み合わせニャ……他には?」

「ハトとパトカーで〝ハトカー〟とか、ラクダと消防士で〝ショウカラクダ〟とか」

「どれもパッとしないアイデアだニャ……ネオ・ノットルンが作ろうとしている怪人はオスの怪人かニャ?」

「そうですけれど」


「最初からコンセプトが間違っているニャ……作る怪獣や怪人は女性型ニャ、生命力はメスの方が強いニャ……それに、メスだと攻撃されにくいニャ」

「どうしてですか?」


「〇察官は女性や少女の怪人に向かって発砲できないニャ……世間の目を気にして……怪獣も同じニャ」

 ニャゴ博士の話しだと、怪獣乙女にもニャゴ博士が作った怪獣乙女と、自然発生した怪獣乙女がいるらしい。


「自然発生した怪獣乙女は、原初母体女王AI怪獣の『クィーン・マザードン』が、AI怪獣細胞を家事の傍らに、女性に付着させて生み出しているニャ……彼女も女の子は攻撃されにくいコトを本能的に知っているニャ」

「なるほど」


 その時、部屋の自動ドアが勝手に開いて閉じた。

「? 誰も出入りしていないのに、勝手に自動ドアが……霊的な怪奇現象?」

「ちがうニャ、特別に製作した怪人をネオ・ノットルンで試作品として使ってもらおうと連れてきたニャ……姿を現すニャ、怪人『カメレオンカッパ』」


 カメレオンとカッパが合成した、女性怪人が現れる。

「カッパぁぁぁ」

「この怪人はカメレオンと利根川のネネコカッパの合成怪人ニャ……この怪人を使って、銭湯の女湯を襲撃するニャ」


 なぜ、女湯を襲撃? という疑問は置いておいて。

 ネオ・ノットルンの覆面科学者は脳改造前に脱走した阪名 華奈について、なんでも知っているニャゴ博士に聞いてみた。

「阪名 華奈の改造手術を処術している時に、ニャゴ博士は『別の並列世界パラレルワールドにも、サカナ カナは存在している』と、話していましたね……あれは、いったいどういう意味ですか?」

「そのままの意味ニャ、こことは別の世界にはさまざまな、サカナ カナが存在しているいるニャ」

「じゃあ、TSした男のサカナ カナとか。ロボットのサカナ カナとかも」

「いるだろうニャ」

「ツンデレの裸サカナ

カナとか、SM女王の裸サカナ カナとか」

「まあ、いても不思議ではないニャ」


 覆面をした科学者が、幼女の裸サカナ カナと言いかけたのでニャゴ博士は慌てて、調子に乗って個人的な趣味の世界に暴走しはじめた覆面科学者の質問を止めた。

「とにかく、カメレオンカッパで女湯を襲撃するニャ」

「カッパぁぁぁ」

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