第3話・油獣双子怪獣乙女『オイルスキー』登場【ガソリンSOS】
高速道路から降りて、華奈が自宅までこいできた戦闘員の自転車は家の前で、分解崩壊した。
「お母さん、ただいま」
裸身に白衣コート、赤いライダーマフラーを首に巻いた華奈は、家族と会わないように足早に階段を駆け上がって自分の部屋に入る。
部屋の中には、等身のタマタマンが、スマホゲームをしていた。
タマタマンが、帰ってきた華奈に言った。
「お帰り、先に言っとくがコレは、華奈が脳内で見ている幻みたいなもんだからな……実際にはオレは、部屋にいない」
ベッドの端に不機嫌そうな顔で座った華奈が、タマタマンに向かって言った。
「出ていってください、あたしの部屋から」
「気にするな」
「あたしは気にします……あたしの体の中からも出ていってください」
「華奈の体からオレが抜けると……死ぬぞ、それでもいいのか?」
「うーっ、なんでこんな目に」
◇◇◇◇◇◇
その時、部屋のベランダの窓扉が開いて。怪人『ブラック・サンタレディ』が部屋に侵入してきた。
「ネオ・ノットルンからのお届け物っぺ」
拳を握り締めて身構える華奈。
ブラック・サンタレディはクリーニングされた華奈の下着を含む衣服と華奈のスマホが入ったビニール袋を華奈のベッドの上に置く。
「今のオラは、ただの配達人っぺ……戦意はないずら。秘密すぎる結社のネオ・ノットルンも脱走した裏切り者の、阪名 華奈に刺客を送りつける気はないっぺ。零細結社にそんな余裕は無いっぺ」
ネオ・ノットルン側は、女怪人を使った計画を進めるので華奈が、止めたければ止めればいい考えだと……ブラック・サンタレディは告げた。
「ネオ・ノットルンの怪人だけじゃなくて、ニャゴ博士も独自に女怪人を作って娯楽で襲ってくるっぺ……まぁ、頑張るっぺ、ここに受け取り証明のサインを」
華奈がタブレットにサインを書くと、ブラック・サンタレディは入ってきた時と同じように、帰っていった。
頭を抱える華奈。
「展開が早すぎて、なにがなにやら、わからない」
タマタマンが言った。
「脳改造されてない脳ミソじゃあ、しかたがないな、一度もどって脳改造してもらった方が」
「しません! 怪獣と怪人の両方の相手をしなきゃいけないってことだけは理解しました……改造人間が巨大化してもいいんですか?」
「過去にサイボーグで巨大化する巨大ヒーローもいたからな、
その時──怪獣の出現を知らせる華奈のアホ毛が立った。
タマタマンが、奇妙なダンスをしながら言った。
「華奈、怪獣出現だ! アホ毛レセプターが反応した、ニャンバラバンバンバン……裸で戦え、サカナ カナ」
「イヤです!」
◆◆◆◆◆◆
小一時間後──華奈は、石油コンビナートが見える海岸にいた。
潮風が裸身に羽織った、白衣コートの裾を揺らす。
飛び出したアホ毛は、ピクッピクッと動いて怪獣の出現を示していた。
紅いマフラーをなびかせた華奈が、あきらめ口調で呟く。
「ほぼ、
華奈は、裸体に白衣コートと赤いマフラーだけの姿で空を飛んで、石油コンビナートの海岸に降り立った。
華奈が自分の中に憑依している、タマタマンに訊ねる。
「どうして、服を着させてくれなかったんですか?」
《巨大化したら、どうせ服が破れ千切れて素裸になるからな……その対策を考え中だ》
「変身して裸になるヒロインヒーローなんて、見たこともない聞いたこともありません」
《巨大ヒーローは、みんな裸だ……移動の方法もいろいろと、考えている》
「どんな方法ですか?」
《華奈はオートバイの免許を、修得する気はあるか?》
「ありません」
《だったら、自転車で移動か……裸で空を飛ぶか、寿命が縮むがテレポーテーションとか、異世界の扉を使って場所移動とか……ブツブツ》
タマタマンが、色々と考えている間に……海上が泡立ち、巨大怪獣が出現した。
ヒトデが二匹、横に並んだような姿をした怪獣だった。
ヒトデが繋がった真ん中には花弁の中にドラゴンのような怪獣の顔があって、パクパクと口が動いていた。
見ていると両側のヒトデの手の部分から花が咲いて中からも、ドラゴンのような首が出てきて三ツ首の怪獣に変わった。
華奈の手元にスマホが出現する。
〈スマホは、裸の時はどこかの空間に保管されていて、華奈が望んだ時に現れる〉
スマホで検索すると、出現した怪獣の情報が表示された。
《油獣双子怪獣乙女『オイルスキー』……普段は海底油田を狙って現れ、時にはタンカーや石油コンビナートにも現れる……ドラゴンの口から〝ガソリン
「ガソリン高騰光線ってナニ? あの怪獣のどこが双子?」
華奈がそうつぶやいた時、並んだヒトデの顔の部分の皮膚が楕円形に剥がれ落ちて、双子姉妹の顔が現れた。
双子の妹が言った。
「ほら、お姉ちゃんが飲みたいって言っていた精製されたオイルだよ」
「ワガママ言って、ワリィ」
「別にいいよ、あたしも純正オイル飲みたかったから……じゃあ、上陸するよ、足並みを揃えて右足から……そうれぇ」
オイルスキー姉妹が上陸してきた。
タマタマンが華奈の体をコントロールして動かす。
《最初だけ変身の仕方を体を使って教えるから、しっかり覚えろよ》
「い、いやです! 勝手に体を操らないでください! わぁ、片手を上げて脇を押さえた変なポーズを?」
《これは、単体ヒロインヒーローに変身する時と兼用の変身ポーズだ……叫べ華奈!》
「カナァァァァァァ!」
遺伝子
巨大化した華奈は、首に巻かれたマフラーを触る。
「なんで、このマフラーだけ一緒に巨大化を……えッ、もしかして」
コンビナート近くの人工池に映っている自分の姿に、驚愕する阪名 華奈。
華奈の体は、一見すると裸身に見える姿で、体の
「あ、あ、あたし……裸⁉ きゃあぁぁ!」
胸を両手で押さえ隠して、しゃがみ込む華奈。
スマホや望遠カメラのレンズを華奈に向ける野次馬たち。
「裸だ! 裸の巨大痴女だ!」
「こっち向いて、股開け!」
泣き出しそうな顔で必死に説明する、阪名 華奈。
「裸じゃありません! こういう模様なんです!」
オイルスキー姉妹も華奈の姿を見て。
「裸?」そう呟く。
華奈は怪獣乙女にも説明する。
「本当に裸じゃないんですよぅ……信じてください」
《心配するな華奈、見えたら困る部分には、遮蔽物や透過光で隠されるようになっているから……
建物や木の葉や木々や自然物で……とにかく、そんなモノで巨大ヒロイン&ヒーローの見えたら困る箇所は、カメラワークで隠される処置がされていた。
《だから、安心して隠さず戦え! サカナ カナ!》
「ムリ、ムリ、ムリ、ムリですぅ」
華奈の額にタマタマンの、ギザギザ刃物角が突き出してきた。
《しかたがない……この方法は、早い段階で使いたくなかったが『ニクノ アツミ』助っ人を頼む近くにいたら、巨大変身しろ》
華奈の額から生えた、角から発せられた電撃が野次馬にいた一人の女子高校生を直撃する。
女子高校生の姿が成人女性の姿に変わって言った。
「借り一つだからね、タマタマン……ニクゥゥゥゥゥゥ!」
遺伝子螺旋の光りの中から、巨大裸体ヒロインヒーロー『ニクノ アツミ』が出願した。
ニクノ アツミこと、本体は地方在住の『肉野 |
「ほら、ちゃんと立って後輩……堂々と胸を張りなさい、隠さず戦う!」
「あなた、誰なんですか? ムリですあなたみたいに、胸は大きくありません!」
「ゴチャゴチャ言っていないで二人であの、油獣双子怪獣乙女を倒すよ……あのタイプの二人分の着ぐるみ怪獣の相手は、派手なアクションはできないから」
歩調を合わせて近づいてくる、オイルスキー姉妹。
「右、左、右、左」
ニクノ アツミが身構えて言った。
「このままだと、あの双子怪獣にプレスされるよ……覚悟を決めて戦え、サカナ カナ! あたしは怪獣乙女の左側、あなたは、右側へ」
ワケがわからないまま、華奈は言われた通りにオイルスキーの右側に跳躍する。
左側をつかんだ、熱美が言った。
「タイミングを合わせて、そうれぇ! 折り紙みたいに左右をくっつけろうっ!」
オイルスキーの体がベキッベキッと音を立てて、左右のヒトデ姉妹が中心に向かって一枚に折られる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
「いたいぃぃぃぃぃぃ!」
ニクノ アツミは、そのまま折り曲げたオイルスキーを、海中に放り投げた。
「海溝に沈んで眠れ!」
油獣双子怪獣乙女『オイルスキー』は、そのまま海中へとオイルを出しながら沈んでいった。
一つの戦いが終わった、華奈は海中に沈んだ油獣のオイル痕跡を見て。
「酷い」と、呟いた。
ニクノ アツミが、憑依していた女子高校生の肉体から離れると、元の等身サイズ姿に戻った女子高校生は、裸体の胸と股間を手で押さえ隠して、悲鳴を発して走り去って行った。
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